トレーニングで伸びるコツ(成長の原理原則)

●もう今日からでも「伸びるタイプ」になれる

今日は発声・話し方のトレーニングに励むみなさんに、「トレーニングで伸びるコツ」の話をします。

といっても、「毎日練習しましょう」だとか「水面下では成長しているから大丈夫」といった、すでに一般にも広く知られているような話ではありません。

どちらかというと、「不都合な真実」と呼ばれるタイプの事実について。

「成長」に関する原理原則です。

この話をよく理解して、自分のトレーニングに取り入れれば、今日からでもすぐに「伸びるタイプ」になれます。

あくまでもあなたが「伸びるタイプ」「もっと伸びるタイプ」になるための話として、今日はお伝えします。

声のサロンでもことば学講座でも、「記憶」や「学習」を取り上げていますね。心理学の大事なテーマの一つです。

成長や技術の習得、トレーニング成果などに関わる大事なテーマです。

あなたはレッスンの時間に、記憶もするし学習もしますね。成長もするし、技術の習得もします。

私はそれを促進させる役です。

学び習うあなたは、有益な技能を習得しようとしている。私はその成果を願っている。

役割は違えど、同じ一つの仕事に取り組んでいるといえるでしょう。


●教えるのがうまい指導者、下手な指導者の違い

教師や講師、インストラクター、コーチと呼ばれる人たちは、教えたり育てたりするのが仕事です。

「できない」が「できる」に変わるサポートをするのが、こうした指導者の役割ですね。

昔も今も、「育てるのがうまい指導者」と「下手な指導者」がいます。

指導者自身、わかっているんですよね。自分はわりと育てるのがうまいほうか、下手なほうか。

どうやってわかるのか。

もちろん、結果からです。成果からです。

教えた相手が育てば、うまい。育たなければ、下手。

教授法を学び、指導の経験を積んでも、生徒がちっとも育たなかったら、良い指導者とは評価されないし、自分でも自信が持てない。

逆に、教える技術を学んでいなくても、長年の経験がなくても、受け持った生徒がグングン成長したら、良い指導者として認められる。自分でも自信が持てる。

あくまでも結果が教えてくれます。

だから、教えてきた年月が短く人数が少ないうちは、確率的に見極めが不正確になります。

極端な話、1人しか教えたことがなく、その1人が育てば「100%成功する優秀な指導者」ということになってしまうし、その1人が育たなければダメ指導者ということになる。

あまりに不正確な見極めですね。

しかし、教えた相手が数百人、数千人と増え、教えた年月も何十年と伸びるにつれて、だんだんと正確な見極めができてくる。

そんなレベルのベテラン指導者たちが語った「育てるコツ」があります。

育てるコツというより、「育てることに成功したとされる成果の真実」です。

優秀とされる指導者は、教え方の技術が優れていたのではなく、「育った相手が優れていた」というのです。

シンプルな言い方をするなら、「育つ人だけを育てた」。

育たない人を、努力して、工夫して、がんばって育てたのではない。

育つタイプが勝手に育っただけ。

もちろん、指導者が「この人は育つから教える」「この人は育たないタイプだから教えない」と選り好みしたり贔屓したりするわけではありません。本気でみんなを指導している。

スポーツの世界では素質ある選手だけ選抜して育てるという場面はありますが、多くの場では「相手が希望すれば教える」ものです。

音楽教室の先生が生徒に「あなたは才能があるから教える」「あなたには才能がないから教えない」と選びませんね。

塾の先生が「キミは伸びそうだから入塾を認める」「キミは伸びそうにないからお断り」なんて選り好みしない。

そりゃそうです。「絵が苦手だから習いたい」と教えを乞うたのに、「どうもセンスがなさそうだから教えない」と断られたら困りますよね。

「センスがあれば、とっくに得意になってる。センスがないから習いたいんだ」とツッコミますよね。

職場でも部下から相談された上司が「キミは才能がないから教えない。私は才能がある部下にしか教えない」と答えたら、問題ですよね。

だから、「育つ人だけを育てた」といっても、みんなを本気で教えてはいるわけです。でも、その中で「実際に育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」ということ。

これが育成の、指導の真実だというのです。

よろしいですか? ここはかなり大事なところです。

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

この一文、ぜひ覚えておいてください。

といっても、教える仕事をしている方は、私も含めて、この事実を「責任転嫁の口実」にしてはいけませんね。それではプロ意識に欠けます。

指導者は、困っている相手に手を差し伸べ、サポートをするのが役目です。

「困っている相手」とはすなわち「不足している相手」なのだから、センスや才能を求めて選別するのは違いますよね。

必要とする人に適切に「give」することだけに集中するのがいい。

「部下を親身に指導して、成長を見守るのは嬉しいけれど、何年かすると異動で担当が変わってしまうから虚しい」という話を聞いたことがあります。

「教室に通ってくる生徒も、いつかは卒業していくから、なんか本気になりきれなくて」とこぼしていた人も。「できるようになると、いなくなる」という。

でも、そこは考え方が大事。相手本位のはずの指導も、入れ込み過ぎるとどこかで自分本位が忍び込んできます。

サポート役が変わり、御役御免になったなら、それはそれで嬉しいこと。

子が自立して自分のもとから離れることを心から喜ぶ親のような意識が、指導者には必要ですね。


●なぜ彼らは伸びたのか

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

私の経験からも、確かにその通りと納得できます。

今までいくつかの分野で数千人を指導してきました。直接会わずに指導した通信教育などを入れれば延べ数十万人になります。

自慢のようですが、「教えるのが異常にうまい」と評されたことがあります。

事実はどうか。

「教えるのが異常にうまい」のではありません。「異常に伸びた生徒がいる」だけのこと。

100人のクラスを担当して、100人全員が例外なく伸びるなら、「教えるのが異常にうまい」と自慢していいでしょう。

でも、そうではない。その中で10人か20人か、限られた一部の生徒に「異常に伸びた生徒」がいる。

英語の授業だとしたら、英語が嫌いでたまらなかった生徒が、テストで80点や90点を楽々取るようになり、やがて英語の仕事をするプロになる──そんな極端な変化をする生徒が一部にいる。

全員ではありません。大勢ではありません。ごく限られた一部です。

それでも劇的な変化だから、目立つわけです。それで「教えるのが異常にうまい」と評される。

指導者自身はよくわかっているものです。「優秀な人気講師」「あの先生に教われば必ず合格する」なんて高く評価してもらえるのは嬉しいけれど、それは「優秀な生徒のおかげ」であることを。

オリンピック選手が金メダルを獲ると、その指導者や指導法が脚光を浴びることがありますが、もちろん指導者の力もすばらしいにせよ、選手が活躍したおかげで評価されるんですよね。

あるプロゴルファーがこんな話をしていました。「スイングに唯一の正解があるわけではない。その時期に活躍している選手のスイングが正解とされるだけだ」。

正しいスイングと誤ったスイングがあると信じている人が多いが、そうではなく、その年に優勝したゴルファーのスイングが正解だとしてみんなが真似するだけのこと。

つまり、そのスイングが「正解」の栄冠を勝ち得たのは、そのスイングを採用して活躍してくれたゴルファーのおかげである、ということですね。

スイングの種類など、細かに分類すれば何種類にも分けられるのだそうです。今年のなんとかオープンで優勝したゴルファーが、スイングAではなくスイングBを採用していたら、優勝できなかったか。

メーカーAのゴルフクラブではなくメーカーBの製品を使っていたら、優勝できなかったか。

まあ優勝はごくわずかな差であっちへ転んだりこっちへ転んだりするので断言はできないまでも、優勝争いをするグループにはおそらく残るだろう、ということでした。

なぜなら、「伸びる性質」を持っている選手だから。


●育つ性質を強めるには

思い出しましょう。

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

トレーニングする側から考えてみましょう。

育ちたい、成長したい、何かを身につけたいなら、「育つ性質」を持つ必要がある、と解釈できます。

どんなタイプが「育つ」のでしょうか。逆にどんなタイプは育たないのでしょうか。

数千件ないし数十万件というケースから、ある程度は統計的に「こんなタイプは伸びる」と導き出すことができます。

私が見てきたのは、文章や発声や潜在意識や動作など、人間の深いところに関わる事柄が多いので、たとえばワープロソフトの使い方だとか機械の操作法などの習得とはちょっと違った部分があるかもしれませんが、共通部分も多いはずです。

トップ3といえる要素を挙げますから、今後のトレーニングに取り組む上での参考にしてみてください。

  1. いつもそのことばかり考えている
  2. 「自分」が強すぎない(長続きする秘訣)
  3. アイデンティティが変わる

それぞれ説明を補足します。

1. いつもそのことばかり考えている

習ったことをいつも意識のどこかに置いていて、何かにつけて思い出す状態は、たいへん望ましい。

「意識」や「言葉」なんて、起きている間ずっと付き合っているものですから、気にしていれば24時間絶えず意識の中に置いておけます。

肩甲骨や股関節の使い方を指導したところ、「仕事中にしょっちゅう肩甲骨を動かしている」と話してくれた方もいます。

「起きてから寝るまで、ずっとトレーニング。たぶん寝ている間も」と表現した方もいます。

むしろ、自分が取り組んでいることを考えていない時間のほうが少なくなっていく。それが伸びるタイプです。

2. 「自分」が強すぎない(長続きする秘訣)

「自分が○○」「自分は××」が強すぎると、習ったことを素直に吸収できないばかりか、取り組みが長続きしません。

「継続」は伸びるタイプの必須条件ですからね。

続けるには、教わる内容と自分自身がぶつからないほうがいい。

たまに年配の方から「もう今から始めても遅いでしょうか」と質問をいただくことがあります。

いつ始めても、伸びる人はぐんぐん伸びます。それに、これからの人生の中で今日が一番若いんです。

とはいえ、年配の方の弱点として「今までの自分とぶつかって素直に受け取れない」ところは確かにあります。

発声を習っても、「若い頃にこう習ったんですけど」と自分の中にあるものとぶつかって、素直に入ってこない。

これに関しては、「素直が一番」と表現したことがあります。

大人なんですから、スパッと覚悟を決めたら、あとは素直に受け取っていくのがいい。それができる人は、必ず伸びます。

そういえば、最近は「ネットでこういうのを見たんですけど」と言われて困惑している講師が少なくないそうです。音楽教室の先生も、生徒さんから「YouTubeでこういう弾き方を見たんですけど」と言われて、「だったらここに習いに来ないで、YouTubeで勉強したらどうですか」とお引き取り願ったそうです。

確かにそういうタイプの生徒は、伸びませんね。ネットでいろいろ探して、参考になりそうな答えがないかと気軽に行動しているのかもしれませんが、この行動パターンの持ち主は、今後も何かあるとネット検索に戻りますからね。

ネットでふらふらと答えを探している点で「自分が強い」とは逆のようにも思えそうですが、「何かあればネット」という行動パターンに執着するところから、「自分が強い」と言えます。

自分を中心に据えて固定し、「自分に合うものを探す」人はなかなか伸びない。

「合う自分に育てていく」という、自分側を動かしていく意識があると、伸びていきます。

3. アイデンティティが変わる

アイデンティティとは、「自分は何者か」の認識のこと。

発声のトレーニングを始めて数年経って、自分を「発声に取り組む者」「声を大切にしている人間」と認識するようになる人は、伸びますね。

つまり、伸びるタイプは「そういう人間」「そういう存在」という自己認識が変化してくる。

逆に、伸びないタイプは「ちょっと声に興味があって習っている」という感覚でずっとやっている。

たとえば、声のサロンやことば学講座を受講している方であれば、「自分は声を大切にしている者」「身体や意識の大切さを知っている者」「だから丁寧にトレーニングを積み重ねている存在」といった自己認識になっていますか?

こうしたアイデンティティは大事です。

そういう存在になっている、という「なりきり」をまずは本気でやってみるといいですよ。

今日は、せっかくトレーニングや修業に取り組むなら成果を上げてほしい、取り組んだなりの素敵なものを手に入れてほしいとの思いから、「伸びるタイプ、伸びないタイプの違い」についてお話ししました。

これを機に、「グングン伸びるタイプ」「ガラリと進化するタイプ」になりきってしまいましょう。

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動作の最適化……股関節

●股関節を使いこなそう

今日の「オンラインことば学講座」では、股関節を取り上げました。

股関節を使いこなすことがどれほど重要か、バッチリ理解できたでしょうか。

こちらの図を見ながら、復習してみてください。

ポイントとなる大事な言葉(名称)は、部位とともに覚えていましたか?

次回のレッスンは、2020年7月11日(土)17:00~です。

それまで股関節を使いこなすトレーニングをたっぷりしていてください。

次回、チェックしましょう。


●動作の最適化すると、どうなるか

これから、あなたの動作を最適化していきます。

朝起きてから寝るまで、あらゆる動作を最適化していくと、毎日の生活が楽になるだけでなく、体が長持ちします。

私たちの身体も、一種の道具であるという見方をすれば、「上手に使えば長持ちす」のは当たり前ですね。

すでに職場での作業が楽になったという体験が寄せられていますよ。

体の使い方の課題で、仕事が楽になりました。

ぞうきんを絞るときに、指先の力を抜き腕全体を使うようにしたら、
軽くしか力を入れていないのに、以前よりもしっかり絞れるようになりました。

感染対策の清拭作業のため頻繁にぞうきん絞りの機会があり、
手首や腕が痛くて苦痛だったのでとても助かりました。

いいですねえ。手の使い方を変えましたね。

雑巾を絞るとき、最後につい指に力を入れてギュッとやりたくなりますね。

でも、それをやっていると、やがて指を傷めたり腱鞘炎になったりして、とてもつらくなります。

手の使い方を変えただけで、負担がぜんぜん違うでしょう?

しかも、ほかの動作にも応用できるのが、うれしいですね。

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仕事でいっぱいいっぱいになったときの処方箋

●超多忙な時期を乗り切るために

「ことば学講座」の補足として、仕事で余裕をなくして「いっぱいいっぱい」になってしまったときの対処法をいくつか挙げておきます。

余裕がなくなると、いつもならできる冷静な判断も難しくなります。

ことば学講座でトレーニングしているような思考法やコミュニケーションの技術を頭ではわかっていても、渦中にあるときは勝手が違うんですよね。

まさに今、ことば学講座で「任せる技術」を取り上げていますが、「任せるのに必要な思考や判断」がうまく働かなくなったら、何から手をつけていいか、何を誰に任せたらいいのかすら、わからなくなってしまう。

そこで、次に挙げるチェックポイントの中で、もしまだ実行していないものがあったら、せめてそこを改善して、この事態をなんとか乗り切ってください。

こんな時期はいつまでも続くわけではありません。乗り切れば、なんとかなりますよ。

「いっぱいいっぱいになってしまったときの処方箋」です。


●書き出す

前回の「ことば学講座」で、記録の効能についてお伝えしましたね。

今やらなければならないことを、優先順位や時間的な順番など気にせず、とりあえず書き出しましょう。

「やらなければならないのは、あれと、これと……」と列挙できるうちは、まだ余裕があります。

本当に余裕がなくなると、「やらなきゃならないことだらけなの!」と個々の把握ができない状態にもなりかねません。

頭の中に置いておくと、ワーキングメモリーに負荷がかかります。

だから、外に出してしまったほうがいいのです。

たとえば、こんな感じに。

□ガラコンサートのプログラム作成
□ガラコンサートの記念バッジ作成
□プログラムの発注
□記念バッジの発注
□紅茶講座用の台湾紅茶を買いに行く
□ウクレレ弾き歌い入門編執筆
□ウクレレ、ギター用楽譜作成
□スタッフ用に胡麻あんまんを探しに行く
□店長の名刺を発注

あ、これは私のですね。

こんなふうに、現在抱えている仕事を思いつくだけすべて書き出します。

すでに〆切を過ぎているもの、まだまだ時間的に余裕があるもの、今日中に終わるもの、数か月がかりで取り組むもの、なんでも構わず書き出しましょう。

ちなみに、行頭に□を付けるのは、済んだときに☑にして整理しやすくするためです。


●優先順位が付けられるなら付けて整理する

箇条書きに挙げた項目を、優先順位を付けて並べ替えられるなら、優先順位の高い項目を上のほうに移動します。

判断ができないものは特にいじらないでそのまま並べておいていい。

さらに、「あなたにしかできないもの」に印をつけて区別しましょう。

「現状では自分にしかできない」としても、「数ヶ月あれば、部下ができるようになりうる」ものもあるかもしれません。

たとえば、上の項目の中で、プログラムやバッジを発注するためのデザインやファイル作成は、ほかのスタッフができるようになるには、じっくり教えて2~3ヶ月はかかりそうですが、ファイルが完成してしまえば、発注の手続きなら誰でもできます。

流れとしてスムーズだから「作成→発注」まで私がおこなっているだけで、発注を誰かに任せたら、仕事が手を離れるのが少し早くなりますね。

紅茶を買いに行くのも、胡麻あんまんを探しに行くのも、何を買うかがわかっていれば誰が行っても同じだし、紅茶の知識があるスタッフになら選ぶ段階から任せられる。

店長の名刺は、切らしてしまったけれど急がなくてもいいし、旧バージョンの名刺でいいなら、以前にお願いしたことのあるデザイナーに電話すれば、すぐにでも印刷会社に発注してくれる。

──と考えると、「私がやらなくても回る仕事」をかなり私がやっていることになります。

書き出したような項目は、ほとんどすべて「任せられる仕事」なんですね。


●いったん整理したら、しかるべき相手に伝える

書き出して整理して「現状」が把握できたら、しかるべき相手(上司など)に伝えましょう。

仕事のリストラやリスケジュールのためです。

減らせる仕事、〆切を変更できる仕事、ほかの人に回せる仕事があるかもしれません。

すでに「いっぱいいっぱい」なのだから、「がんばれば、なんとかなる」と考えず、まずは「がんばらなくても、なんとかなる」レベルにペースを落として、心身を立て直しましょう。


●「できない」と言う

真面目で能力の高い人ほど、「できない」と言えず、キャパを超えて仕事を引き受け、抱え込んでしまいます。

上手にチームメンバーや部下に割り振れればいいのですが、誰がどの仕事に向いているか、誰に任せたら本人の成長につながるか、などが判断しきれない年度初めの時期などは、結局は自分ですべて背負ってしまいます。

キャパを超えたなと思ったら、「できない」と言いましょう。

それは決して、仕事の放棄ではありません。「できる仕事を、責任をもって丁寧におこなう」のがいい。

仕事には「安心ゾーン」「挑戦ゾーン」「混乱ゾーン」があるとされています。

「安心ゾーン」は、特に負荷のかからない、テキトーにやってもできる(レベルや量の)仕事。

「挑戦ゾーン」は、普通にやっていたら難しいが、工夫やがんばりによってやり遂げられる仕事。成長につながる。

「混乱ゾーン」は、完全にキャパを超えている仕事。余裕を失い現場は混乱する、

真面目で能力の高い人ほど、キャパを超えているのがわかっていても、「残業すればなんとかなる」「休日出勤で進めれば大丈夫」と、引き受けてしまう。

「できない」と判断したら、自信をもって「できない」と言いましょう。

「今これだけの仕事があって」「いつまでの〆切では間に合わない」「何時間かければできそう」「だから○月○日まで〆切を延ばしてもらえればできる」という具合に「理由を添える」ことを忘れなければ、上司に伝わるはずです。


●力を抜いてリラックスタイムを過ごす

いっぱいいっぱいになるほど忙しくても、食事や入浴をしないわけではないでしょう。

忙しい時期ほど、脳内を「静か」にする時間が必要です。

脳内が「うるさい」のは、机の上がごっちゃごちゃのまま、どこに何があるのかわからないまま作業をしているようなものです。

「忙しくて、片づけている暇がない」と言い訳したくなりますが、片づけてから次の仕事をしなかったら、状況が悪化の一途をたどるのは目に見えています。

だから、食事中や入浴中、寝るときまで「あ~、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と騒々しいまま過ごさないで、パチンとスイッチを切ってとろとろにリラックスする時間を過ごしましょう。

ゴムをギューッと引き伸ばしたままにしておくと劣化してしまいます。

意識的にゆるめましょう。

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ウクレレ弾き歌いのコツ

仕事の評価を高める「文章構成」「話の組み立て方」の能力

●なぜか仕事の評価が低い人の共通点とは

ご一緒くださる方はもうご存じのとおり、紅茶のお茶会(新潟市)で「英国といえば、コレ!」のコーナーに出演します。

英国に関するネタの中でも、「日本人にはあまり馴染みがなくても、英国人にとっては当たり前」というネタをご紹介するコーナーです。

わずか15分程度の短いコーナーですが、こうして言葉のトレーニングをしているあなたには、英国ネタとしてだけでなく、言葉のレッスンとしても聞いていていただきたいと思っています。

「文章構成」「話の組み立て方」レッスンです。

今、「言葉の調律」を進めていますね(ことば学講座)。

「単語」レベルで言葉を意識しているタイミングが多いでしょう。「この単語を、この単語に置き換える」という具合に。

その単語が浮かんでくるもとにある「考え方」が重要なのですが、今は「出てきた言葉」に注目して、自分の言葉に「気づく」訓練をしている段階です。

しかし、仕事で言葉を使う場合、単語の置き換えですべて片付くかというと、そう簡単にはいきません。

「全体像」や「流れ」を意識した「文章構成」の仕方が大事です。

これは「組み立て方」であり、「パーツの並べ方」ともいえる。

仕事での評価がなかなか上がらない人は、「文章構成」が苦手です。「流れ」を作ることができないのです。

日本人は概して、構造的な捉え方、組み立て方が苦手といわれています。ディテールにこだわったり、職人的に徹底的にやるのは得意なのに、時間を味方につけた「積み重ね」が苦手で、せっかくの成果も一代限りで終わってしまう。

せっかく取り組むなら、着実に積み重ねを続けていきたいですね。


●鳥の目と魚の目を鍛えよう

全体を見る目は「鳥の目」、流れを見る目は「魚の目」、一部だけをアップで見る目は「虫の目」と呼びます。

言葉のトレーニングでいうと、「どんな単語を使うか」は「虫の目」に相当しますね。

細かいことにこだわって、「全体の中での位置づけ」を見失ってしまうのは、「虫の目」は持っていても「鳥の目」が弱い人。

「そんなのどうでもいいだろう」「細かいことはいいんだよ」としょっちゅう叱られてしまう人は、鳥の目で見た「全体の中での重要性」を捉え損ねているかもしれません。

絵画的に全体をざっくり捉えているようでも、適切な順序に並べて話せないのは、「魚の目」が弱い人。

言葉はリニア(線的)です。流れです。

複数のことを同時に話したり書いたりできません。

良いニュースと悪いニュースがあるとして、両方とも伝えなければならないとしたら、「よし、両方を同時に伝えて中和しよう」はできないのです。

先に良いニュースから伝えて、悪いニュースは後にするか、それとも逆にするか、順序を決めなければなりません。

ビジュアルで見せたいなら、簡単ですよね。紙を左右半分に分けて、左に良いニュース、右に悪いニュースを書き並べて見せれば、相手は好きな順序で読むだけだから。

ところが、あなたが声で説明するとなったら、時間軸に沿って並べる必要がある。

これが「文章構成」です。

仕事の評価が高い人は、文章構成が、つまり話の組み立て方がうまい。

今回のお茶会は、「文章構成」「話の組み立て方」のレッスンとしてもしっかり聞いていてくださいね。

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伝わりやすい話し方 vs. 癖のある話し方

●「気づきがありました」

先日、こんな質問がありました。

> 「気づき」という言葉は辞書には載っていないのに、
> 職場でよく使われています。
> どういう言葉なのでしょうか。

確かに、ここ数年よく見聞きするようになった言葉ですね。

「先日の勉強会に参加して、たくさんの気づきがありました」のように使われます。

「気づいたことがたくさんありました」
「勉強になりました」
「発見がいくつもありました」

といった表現なら不自然な響きはありませんが、「気づき」は確かに妙な引っかかりがあります。

それもそのはず、自己啓発の分野で使われだした独自の用語だからです。

ついでなので、ちょっと日本語の勉強をしましょうか。

動詞の連用形を「動詞の名詞化」として用いるのは、日本語の一般的な用法です。

「走り」「学び」「○○集め」のような用法ですね。

先ほどの「引っかかり」もそう。

「踊り」「試し」あたりになると、「動詞の連用形」の香りはなくなり、完全に名詞になりきっていますね。

だからといって、何でもかんでもこの調子で名詞化して通じるわけではなく、「俺の“泳ぎ”を見せてやる」なら自然ですが、「俺の“食べ”を見せてやる」はおかしいでしょう?

「泳ぎ」は連用形からの名詞化として定着していますが、「食べ」は定着していないからです。

この場合、「食べっぷり」と別の言葉に置き換えれば、さほど不自然でない話し方になります。

同様に、最近たまに見聞きして、そのたびに頭の中で変換が滞るのが「見える化」。

でもこれは、日本語の造語法から完全に外れており、明らかに特殊な言葉と分かるので、「……と私は呼んでいます」程度の用語と解釈して流せます。

「可視化では堅苦しいので、分かりやすく“見える化”と呼んでいます」と説明されたら、なるほどと納得できるでしょう。

ところが「気づき」は、どことなく普通名詞っぽい雰囲気を漂わせているから、余計に違和感があるのでしょうね。

「気づき」に引っかかるその感覚、良い言語感覚だと思います。

もっとも、語彙はこうして少しずつ変化していくので、もしかして30年後には、ごく自然な言葉として日本語の仲間入りをしているかもしれません。

良い話し方は、「伝わりやすい話し方」です。「癖のある話し方」に気づいたら、自然な言い方に言い換えるトレーニングをしてみましょう。

わざと癖のある言い方で引っかかりを作り、何かを伝えようとするテクニックもありますが、上級者向けです。

ほかにも何か、言葉に関する“気づき”があったら、ぜひ聞かせてください。

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名器を手に入れる言葉のレッスンとは

●言葉と声のトレーニングは「名器の入手」に等しい

ストラディバリウスといえば、言わずと知れたバイオリンの名器。

この名器を世界的なバイオリニストが手にすれば、ウットリさせる音色で私たちを魅了します。

しかし、どんなに優れたバイオリニストでも、バイオリンを手にしていなかったら、ただの人です。

実力があっても、その実力を発揮するための「道具」がなかったら、どうしようもありません。

「言葉」についても、同じことが言えます。

言葉はあなたの内面の表れです。

つまり、あなたの口から出てくる「しゃべり」は、内面そのものではなく、内面の「表現」(表れ出たもの)です。

バイオリンの例でいえば、バイオリニストの持つ演奏技術が「内面」。音楽を奏でるためのベースですね。

言葉と声は「実際に出る音や奏でる音楽」に喩えられます。

つまり、言葉と声の能力が高いということは、「優れた楽器を持っている」とも言えるわけです。

素敵ですね。言葉と声のトレーニングは、「名器の入手」なのですから。

世界的なバイオリニストでも、「弦が数本切れている」ような不完全なバイオリンは演奏できない。

言葉でいえば、「語彙が少ない」状態です。

プロのクラリネット奏者でも、管の詰まったクラリネットでは良い演奏はできません。

発声でいえば、「喉が詰まっている」状態です。

あなたがいくら素敵な「内面」を持っているとしても、その素敵な内面を実際に外に表し相手に伝えるための「表現」は言葉と声が担います。

質の高い言葉と声──まとめて「話し方」──はさしずめ名器です。

これから名器を入手して、磨きをかけていきましょう。

これから「ことば学講座」では、あなたが名器を手に入れるための、あなた自身を名器にするための言葉のトレーニングをパワーアップしていく予定です。

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あなたの言葉を「感じよく」するレッスン

●「感じのよさ」は価値

今月の魅力アップ講座は、「あなたの言葉を感じよくする方法」と題して、言葉のレッスンをします。

それも、会場でただ話を聞くだけでなく、自ら「言葉の作業」をするトレーニングの時間です。

「感じがいい」って、多くの人が思っているより、ずっと大事なんですよね。

「感じのよさ」とは、「価値をカバーするごまかし」「その場しのぎの姑息な手」ではありません。

感じのよさはひとつの価値です。

「感じがよくない」ことが原因でうまくいっていない場面がたくさんある理由は、「感じのよさはひとつの価値」と考えると、よく理解できますね。

あなたの話し方に、価値を加えましょう。

 

●言葉を置き換えていこう

実はすでに昨日、新潟会場のレッスンは終わっているので、受講者から「その後のトレーニングの様子」が届きだしました。

「言葉を感じよくする」には、今まで無造作に、疑うことなく使っていた言葉を、別の言葉に置き換えることになります。

「こんなふうにやっていいのか」「この方向の置き換えでは感じがよくならない」と感覚がつかめると、言葉の置き換えがどんどんできるようになります。

「ちょっと練習するだけで、こんなにうまくなるんだ」と驚くかもしれませんよ。

 

●感じのよさは内面から

「言葉を置き換えるだけでなく、本心からそう思う自分にならないと、本当のトレーニングではありませんよね」と話してくれた方がいます。

まさに、それがトレーニングです。

適切な言い方を思いついたとしても、本気でそう思っているわけではないとしたら、単に「口がうまい」「うわべだけの人」だけになってしまいます。

とはいえ、「聖人君子じゃないから、そんなキレイ事は言えない」と言いながら悪口や毒舌を吐くのは、違います。

断じて違います。

少し無理して、少し背伸びして、「今の自分にはちょっと気恥ずかしい」ような言葉でも使ってみることで、内面も変わっていきます。

言葉と内面は、本来ひとつですから。

さあ、言葉のレッスンを続けますよ。