いい声で話すコツ──練習量を増やそう

●練習は裏切らない

以前にここでも「練習は裏切らない」という言葉を引き合いに出して、練習量を増やしましょうとお伝えしました。

練習は、習慣です。
ある日急に思い立って、声が嗄れるまで何時間も練習したって、翌日にへばって声が出ないようでは、練習になりません。

気分の盛り上がりとは無関係に、習慣的におこなうのが練習です。そうであってはじめて練習効果の積み重ねになります。

レッスンを受けて伸びる人は、いわゆる「素直な働き者」で、正確なトレーニングをコツコツと真面目に続けます。

「真面目だけが取り柄ですから」と話していた方がいます。真面目は最高の取り柄です。私も「真面目な人に教えたい」なんて話したこともあります。

真面目なタイプは一点集中で真剣に取り組むので、確実に伸びます。自分の感覚や思い込みに囚われず、新しいことをパッと取り込んで「染まって」いけるのも特徴です。

そして、なんといっても、「ちゃんと練習する」。だから伸びるわけです。

課題が難しいと感じたら、練習量を増やしましょう。朗読課題が「うわ~、なかなか覚えられない」と思う暇があったら、もう一度読みましょう。

「できない」「難しい」と口にする人ほど、練習量が少ないものです。「30回くらいで、なんとなく覚えられるものですよ」と聞いても、10回程度で「いやあ、なかなか覚えられないですね~」と弱気な言葉を口にし始める。

脳の仕組みからして、新しい技能を身に着けるとき、「繰り返し」は必須です。

繰り返しこそ、練習です。
繰り返しこそ、準備です。

練習量を増やしましょう。イヤというほど、イヤにならずに、ひたすら繰り返し練習したら、本番はちっとも怖くない。

そういう体験を積み重ねていきましょう。

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共鳴発声法のトレーニングに朗読は必須

●朗読の技法

こんなご相談がありました。

「朗読なら良い声で読めるのですが、ふだんの会話がダメなんです」

わかります。できあがっている文章を覚えて声に出すのであれば、自信をもって良い声で「演じる」ことができるのでしょう。

なのに、その場その場で考えながら、反応しながら口に出す「会話」はどうしても口元の声、喉声、ナマっぽい幼稚な声になってしまう。

そんな声を「地声」と呼ぶ人もいます。「地声」は正式な発声用語ではないので、どんな発声を指しているかをその都度確かめる必要がありますが、良い声ではないナマっぽい感じ、野太くて低めの声を指している人が多いようです。

しっかり練習した「商品の説明」は、良い声で話せる。なのに、厳しい指摘などが飛んできたときに「すみません」と口走る声が口元の太い声になってしまうとしたら、共鳴発声法の型ができていないから。

共鳴発声法で話せるようになるには、朗読練習によって体に型を教え込む必要があります。

本番で少々慌てても、逆に緊張がゆるんでも、体が型を覚えていれば、崩れません。まるで形状記憶合金のように、気を抜いてもちゃんと良い形に戻る。

そのための「朗読レッスン」に、これから入ります。

 

●「声色」は使わない

朗読では、「声色」は使いません。「声色」(こわいろ)とは、いわば物真似のこと。

登場人物が女の子ならキャッキャッと女の子らしい声を出し、ネズミが出てきたら奇妙に甲高い声をキーキーと出し、ゾウが出てきたら低~い声での~んびり話すことでキャラ設定をするようなのは、声色であって朗読ではありません。

たとえば、夏目漱石の『坊っちゃん』の冒頭に、「いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい」という台詞が出てきます。

ここを読むとき、あまりに気分を出して、挑発的に、バカにした調子で声を歪ませて「よ~わむ~しや~~~い」のように読むと、朗読としては少々不自然になります。

過剰な声色のせいで、聞き手が物語の世界から抜けてしまうのです。

登場人物をイメージしながら読めば、自然に「なんとなくそれっぽい印象を抱かせる」話し方にはなりますが、最小限に抑えて、聞き手の想像の余地を損ねないようにしましょう。

さあ、共鳴発声法で朗読しますよ。共鳴発声法という「声の型」を染み込ませましょう。

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上手な「断り方」が自分の時間を増やしてくれる

●上手に断る方法を教えて

「断り方」に悩んでいる方は少なくありません。

「飲み会への参加を断る上手な断わり方を教えてください」と「会話に関する質問」に書いてくれた方もいますね。

特に自分の大事な取り組みがある人にとって、時間を奪われてしまう「あまりプラスにならない会合」には参加したくないのが本音でしょう。

冬になると、忘年会やら新年会などが増えて、相談を受けるケースが増えてきます。

断り方の原則として、次の3つを守ってみてください。きっとうまくいきますよ。

  • 言葉はやわらかくても、態度は断固として
  • 一貫性を持たせる
  • 否定しようのない理由を添える

たとえば、「忘年会への参加を断る」とします。

「出たくないんです」のようにストレートな言い方では、角が立ちます。

「え、なんで?」と聞かれますよね。それが面倒くさくて、しょうがなく参加してきたのでしょう?

言葉はやわらかく、が原則。ただし態度まで「えぇ~っ、でもぉ……どうしようかなあ……」なんてやっていると、「迷える程度の理由で断ろうとしているのか」と不審に感じさせてしまいます。

また、「一貫性」はきわめて重要です。「一貫性を持たせるための説明」を考えましょう。

「お酒を飲みたくないので、上司にそう言ったら、乾杯だけは付き合いなさいと言われて、それ以来ドタキャン」

ドタキャンなんかして大丈夫ですか? 繰り返したら余計に叱られるでしょう。

「飲みたくない」なんて理由がよくないんです。一貫性を持たせるためには、「体質的に飲めない」のような永久に使い続けられる理由を伝えないと、次回以降ずっと新しい口実を考えなければなりませんよ。

うっかり乾杯に付き合った回があったなら、今さら「体質的に」は使えないので、「ドクターストップで」あたりが使えます。

理由を聞かれても「はい、ちょっと……」で濁せます。

こういった理由に対して「そんなの大丈夫でしょ」と無理強いする人はいないでしょう。

まあ実際にはいますが、そういうケースはまた次の手を考えればいい。

まずは原則を押さえておきましょう。

最後に「否定しようのない理由」として、たった今すごく良い例が届いたので、ご紹介しますね。

> 所属している部署の忘年会に参加する予定にしていました。
> 退職される方がいるので送別会も兼ねるのかな、
> と思ったためです。
>
> ところが送別会はあらためて行うと知ってから、
> 不参加に変更しようか迷っていました。
> 仕事も忙しいし、お酒の席は好きではないし、
> 気持ちいい会話が飛び交う場になりそうにもない。
> でも、今さら断りにくい上に、20名弱の組織で女性が5人だから、
> 私が行かないとなんとなく会が寂しくなるかな、
> などといろいろ考えていました。
>
> ところが、誰に聞かれても堂々と言える偽の急用を思いついたのです。
> 「妹に頼まれて赤ちゃんの世話にいく」です。
> とたんに心に余裕ができ、あっさりと断ることができました。

なるほど、うまいですね。
「妹に頼まれて赤ちゃんの世話にいく」という口実に対して、「べつに行かなくてもいいでしょ」とは誰も言えません。

ほかに似た──汎用性の高い──口実に「親の介護」があります。

個人の都合や好き嫌いにとどまらない、他者が関わる理由で、しかも古典的な「不幸があって」と違って何回でも何年にもわたって使える点で秀逸です。

「親なんかいいじゃない。一晩ぐらいほうっておけば」とは誰もいえませんよね。

 

●「来られないんでしょ?」と言われたら大成功

おもしろいもので、こういった会合(忘年会やら新年会やら)が積極的に好きな人は意外に少ないようです。

大人になればなるほど、「時間がもったいない」と億劫に感じるようになるらしい。

なのに、「毎回いちいち断る口実を考えるのが大変だし、断ると迷惑をかけているかも、どう思われているのかな、と考えてしまうのがストレスだから、仕事のうちと割りきって参加している」人が多いようです。

一部の人たちがわ~っと盛り上がると「みんながそう」に見えるんですよね。「みんなが年末の忘年会を楽しみにしている」と。

でも、実際は違う。

マスメディアが取材したりニュースになったりする物事を考えれば、「目立って見えるのはむしろ一部の特殊な人たち」とわかる。

ハロウィンの夜には若者がみんな渋谷に集まるように錯覚するし、年末年始には日本人みんなが大きなスーツケースを転がして成田空港にいるように見えるし、ゴールデンウィークの終わり頃には日本人がみんな高速道路の上でイライラしているかのように思える。

しかし、若者の大多数は渋谷に集まらないし、日本人の大多数は年末年始に日本にいるし、日本人のほぼ全員が高速道路以外の場所にいる。

「風潮」に飲まれることなく、素敵な時間を確保したいですね。

こうして話し方や発声、コミュニケーションを学び、トレーニングをしているあなたにこそ、「波風を立てずに、風潮に合わせる」のではなく、あえて多少の波風を立てたとしても、素敵な時間を確保できるように「断わり方」の技術を高め、しかも実践していただきたい。

毎回「断わる口実を考えるのが面倒」なのは、なんとなく風潮に飲まれて参加したりしなかったりと揺れるから。

最初から「来られないんでしょ?」と聞かれるようになったら、うまい「断わり方」が功を奏している、ということです。

毎回律儀に参加している人ほど、よんどころない事情での欠席なのに「義理を欠く」「こういう場には出なさい」などと責められ、出ないのが当たり前になっている人は、「お世話になった方の送別会だから挨拶だけ」と顔を出したら「律儀ですね。ご丁寧にありがとうございます」なんて喜ばれる。

なにより、大切なトレーニングに充てる自分の時間を毎日確保できるようになるのがプラスです。

みんなが酔っぱらって騒いでいるような場に身を置くより、素敵なお茶会で素敵な会話のトレーニングをするほうが話し方の指導者としてもオススメです。

「断わり方」──気にしてみてください。

「えっ、今回も来られないの? なんで?」はまだ断わり下手。最初から「来られないんでしょ?」と聞かれるようになったら、真の断わり上手といえるでしょう。

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子供のハスキーボイス(学童嗄声など)

●子供の嗄声を治したい


言語戦略研究所所長の齋藤匡章です。

ボイスアカデミー(キッズボイス)には、お子さんの嗄声(ハスキーボイス、ガラガラ声)についてのご相談がたまに寄せられます。

今日も、キッズボイスではありませんが、「娘の嗄声を治してあげたい」とのご相談がありました。

小中学生くらいの活発なお子さんがハスキーボイスぎみの場合、いわゆる学童嗄声と呼ばれるケースが多い。

声の出し過ぎで声帯結節ができ、声が常にかすれている状態で元気な男の子によく見られます。

たいていの子供は発声を習わないので、元気に大きな声でしゃべったり叫んだりしていれば、声帯にトラブルを負うのは仕方ないのですが、ひどいガラガラ声なら本人も快適ではないはずなので、早めに対処してあげましょう。

音楽の時間に歌うとしても、みんなが楽に出せている高音が、全身で振り絞るようにしないと出ないので、歌うことが嫌いになってしまうかもしれません。

ハスキーボイスを個性と捉える向きもありますが、声帯にとっては不適切な使われ方ですから、まずは「声帯の使い方」を身につけさせてあげたほうがいいでしょう。

発声の専門家からすると、ハスキーボイスは決して良い声ではありません。喩えるなら、ケガをして足を引きずって歩いているようなもの。

ケガやトラブルで一時的に足を引きずるのは仕方ないとしても、治っても引きずっていたら、「それも個性」とは呼ばないでしょう。

また、人気アイドルやアニメの登場人物がハスキーボイスだとしても、真似をしてハスキーボイスを出そうとするのは、「足をケガしたアイドルの真似をして足を引きずってみる」ようなもの。

しかも、ハスキーボイスは声帯に負担がかかります。やるのは自由とはいえ、オススメはできません。

やはり、澄んだ共鳴発声法が「良い声」ですから、できる範囲で働きかけをしてあげられるといいですね。

 

1. 大声で話したり叫んだりすることが多いケース

小児や児童に多く見られる典型的な嗄声で、思春期を過ぎる頃には自然に治ってしまうことが多いので、さほど心配はいりません。

ただ、話している内容が聞き取れないほどの嗄声でコミュニケーションに支障をきたしたり、本人が苦しそうだったりするなら、「できるだけ声を出さない」「せめて大声は出さない」などをアドバイスして様子を見てください。

大人でも黙ったまま過ごすのは大変ですから、小学生がアドバイスを厳格に守ってくれはしないでしょうが、多少でも声帯への負担が減れば治りやすくなります。

ほかにも、

・力んでしゃべらない
・奇声を上げない
・叫ばない、怒鳴らない
・長い時間ずっとしゃべり続けない
・賑やかな場所でしゃべらない
・動きながら声を出さない(部活動でありがち)

といったアドバイスも適宜してあげるといいでしょう。

 

2. 大声は出さないほうなのにハスキーボイス

大声を出すタイプではないのにハスキーぎみになっているなら、発声の仕方が原因と考えられます。

声帯にトラブルがなくても、声帯の使い方によっては、ハスキーボイスになってしまいます。

健康な声帯の持ち主でも、森進一さんの真似や力士の真似をして、「ごっつぁんです」などとやれますね。

その声が、「発声の仕方が原因の、健康な声帯による嗄声」です。

治し方を子供に説明するのは難しいので、良い声とハスキーボイスが入れ替わるように混在しているなら、良い声が出たときに「今の声、いいよ」と教えてあげるのが一番です。

常時ハスキーボイスの場合はなかなか難しいのですが、本人が「なんとかしたい」と思っているなら、焦らず急かさず気長に取り組むといいでしょう。

 

●ジラーレの感覚がわかれば早い

まず、森進一さんか力士の真似をして、わざと嗄声を出してみてください。

声を喉で出すと(喉声といいます)、ハスキーボイスになりやすいですね。

感覚としては、呼気を声帯に強引にぶつける感じの発声です。

そのまま息を多く漏らしながら話せば、嗄声でのしゃべりになります。

喉あるいは声帯を剥き出しにして声を出す感覚ともいえる。

もちろん本当に声帯が剥き出しになるわけではないので、
発声の説明は難しいですね。

この発声が癖になっている状態が、このケースの嗄声です。

健康な声帯の持ち主であるあなたが、
ずっと森進一さんになりきっているようなものです。

では次に、良い声を出してみましょう。

一瞬「あれっ?」と、普段の発声がわからなくなったかもしれません。

そのくらい、発声は習慣的な身体操作なので、癖になってしまうと直すのが厄介なのです。

まあでも、一時的に物真似をした程度なら、すぐに戻せますね。

澄んだ声を出してみて。

また森進一さんになって。

また澄んだ声。

今度は力士。

また澄んだ声。

交互にやってみると、良い発声と嗄声の違いがわかるでしょう。

良い声のときに、発声のポジションを少し持ち上げて感じがしたら、感覚をうまく捉えられています。

「ジラーレの動き!」と感じたなら、とっても上手に捉えられています。

その感覚をお子さんに伝えて(そこが難しいところですが)、嗄声の状態を変化させられるかどうかを、ゲーム感覚でやってみてください。

とっかかりとしては、「いつも嗄声になりやすい状況」(言葉、声量、フレーズの位置など)を利用してトレーニングしてみると、変化がつかまえやすいでしょう。

「自分の声をよく聞いて」と伝えて、声を聞く習慣をつけさせるのも、良い発声を身につける手助けになりますよ。

声の能力は、一生ものです。その価値に本人が気づくのはずっと先のことになるでしょうが、生涯にわたってすばらしいメリットをもたらし続けるはずです。

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言語戦略研究所でプレゼンテーション講座 齋藤匡章
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会話が続かないなら──話し方教室で会話のコツを習おう

●「会話が続かない」という悩み

言語戦略研究所所長の齋藤匡章です。

会話をテーマとする講座が近づいているので、
せっかくなら日頃の悩みが解消されやすいレッスンにしようと、
会話に関する悩みや質問を募集したところ、
「会話が続かない」というご相談が多く寄せられました。

あなたはいかがですか?
「会話が続かなくて気まずい」という状況に
困惑した経験はありますか?

今度の「秋の講座」ではもちろん「会話」を基礎から
徹底的に学んでいただきますが、
ふだんは「声のサロン」で会話や話し方を練習しましょう。

会話は、毎日の行為です。
数ヶ月に1回くらいレッスンを受けたところで、
日々の会話の中でいつの間にか「自己流」が復活してしまいます。

会話が続かないなら、続かない理由があります。
その理由が、「自己流」の中にあるのです。

「慣れ」だけでは、会話上手にはなれません。
度胸ぐらいはつくかもしれませんが、出たとこ勝負になってしまう。
うまくいく場面といかない場面の波があって、
ここ一番という大事な場面ほど「確信が持てずに終わる」。

あなたには、「これでいい」と確信が持てる会話の技術を
身につけてほしいと思っています。

そしていつか、今度はあなたが教える立場になって、
会話に悩む人たちの力になってあげてください。

そのためにも、しっかり学び、練習して、
高いレベルまで会話の技術を身につけましょうね。

会話のキャッチボール(ラリー)が長く続く
気持ちいい会話のコツを学びましょう。

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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
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どんな仕事も話す力で差がつく

●なぜあの人のほうが仕事で成功しているのか

話し方レッスンの講師なら当たり前ですが、
ほかの仕事でも「話し方」次第で成功したり失敗したりします。

プロとして提供するサービスの中心が「話し方」ではなくても、
話し方が良ければプロとして成功するし、
話し方が下手ならプロとして成功できません。

専門家としての知識や技術は同等でも、
話し方の技量が違えば、それだけで大違い。

「伝わらなければ無いのと同じ」といいますね。
つまり、話す力がなかったら、
知識や技術が無いのと同じなのです。

具体例を挙げましょう。

 

●事例1……料理教室

料理教室の先生にとって、「提供するサービスの中心」は
料理の知識と技術です。

ところが、プロとして似たようなレベルの知識と技術があるのに
こちらの料理教室は繁盛していて、あちらの料理教室は閑古鳥。

ひとえに講師の「話す力」の差です。

わかりやすく、楽しく、興味深く、
伝わるように話せる講師の教室は人気があります。

何が言いたいのかよくわからず、
配付資料を読まないと作り方が覚えられないような料理教室では、
来た生徒も辞めてしまいます。

 

●事例2……音楽レッスン

ピアノ教室は、「優秀な先生ほど成功する」
と思われるかもしれませんが、
やはり「話す力」が大きく関わってきます。

世界コンクールで優勝するような演奏技術を持つ
優秀なピアニストでも、指導者として優秀かどうかはわかりません。

プレイヤーとコーチでは必要な能力が違って、
コーチのほうが「話す力」がよりシビアに求められます。

ピアノ教室は「ピアノを弾く技術を授けること」が目的であって、
演奏を聴く場所ではないので、
先生の演奏技術だけで運営がうまくいくわけではありません。

演奏技術などプロとしての一定の水準を超えているのは前提に過ぎない。

「あの先生はすごい。ショパンコンクールで優勝したんだから」
といった経歴を大人は喜んで退屈なレッスンに耐えられますが、
素直な子供ならレッスンがつまらなかったら
「もう行きたくない」「あの先生キライ」になる。

ピアノ教室がうまくいくかどうかは、
先生の「話す力」で決まります──なんて言い切ったら
断定しすぎと思うかもしれませんが、実際にピアノ教室を覗けば
納得できるでしょう。

 

●事例3……セールスパーソン

言うまでもないかもしれませんね。
営業マンの成績は話し方で決まります。

商品力や商品知識は「あるのが前提」として、
相手の状況や関心事を聞き、魅力をわかりやすく伝える
「話す力」によって、売れ方に差がつきます。

もしセールス担当になって行き詰まりを感じているなら、
商品知識に関して自信が持てるレベルに達しているのであれば、
やるべきことは「話す力」の向上です。

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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
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発声や話し方を仕事にしよう

言語戦略研究所所長の齋藤匡章です。

今、「声のサロン」で学んでいる会員には、
声を自分の仕事にしてほしいと思っています。

声や話し方そのものを仕事にするような、
話し方講師やボイストレーナー、声優、アナウンサーばかりでなく、
「話し方を今の仕事と融合させる」のも一つの選択肢でしょう。

お友達ができなくて悩んでいる小中学生に発声や話し方を教えて、
学校で楽しく過ごせるように支援するキッズボイスは、
まさに声そのもの、話し方そのものの指導ですね。

新潟ヨガ教室のインストラクターは、発声を鍛えることで
ヨガ指導のクオリティを高め、生徒さんたちの役に立とうと
真摯にトレーニングをしています。

着物の着付け教室の先生は、着付けを指導する際の
非常に近い距離での発声、話し方に苦心し、
声のトレーニングで発声コントロールを身につけています。

講師として全国を飛び回っている会員は、
指導時の発声、話し方だけでなく、
関係者との関係の構築に話し方トレーニングを活かしています。

「癒し」の業界に転職した方は、新しい仕事にふさわしい
声と話し方を身につけようと真剣です。

このように発声や話し方には、ほとんどすべての仕事と融合できる
柔軟性と可能性があります。

せっかくこうしてトレーニングを積んでいるのだから、
ぜひとも「稼げる」ようになってください。

趣味や教養として声や話し方を学ぶのも素敵ですが、
できることなら、その能力を活かして人の役立ってください。

役立っているかどうかの一つの目安が「稼げる」ということ。
だから「声のサロン」では、「どうやって仕事にするか」
「どうやって仕事に活かすか」までサポートしたい。

もちろん無理にとは言いませんから、
私から「こんな仕事をやって」と押しつけることはありませんが、
セルフプランとして「今はこんな状況」「こんなことをしたい」
という話をぜひ聞かせてください。

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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
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発声、話し方──すべてが仕事の役に立っています

言語戦略研究所の齋藤匡章です。

受講者のお一人から、うれしいご報告をいただきました。

最近仕事がなんだかうまくいっていて、
どうしてこんなに気持ちよく順調なのかと考えたら、
発声、話し方、文章の書き方など、
「声のサロン」や「季節の講座」で学んだことが
すべて仕事に役立っていることに気づいた、というのです。

すばらしいですね。
真剣に取り組んできたからですよ。
発声や話し方は一生ものですから、これからずっと役立ちますよ。

「声ってスゴイんですね」と話していましたが、
確かに声はスゴイのですが、その声にしっかり取り組んでいる方が
スゴイと私は思っています。

文章の書き方ならまだ、捉えどころがありますね。
文章の「型」もあります。

ところが、声は目に見えないし、捉えどころがない。

トレーニングが進むと声を捉えられるようになるのですが、
とっつきにくいのは確かでしょう。

しかも、歌声ではなく話し声なんて、母音も短いから
トレーニングが難しくデリケートです。

そんな声を、あきらめることなく「しっかり極める」と決心して
じっくり取り組んでいるから、それだけの成果が得られたのです。

よかったですね。

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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
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会話レッスン──沈黙が気まずいなら間を利用しよう

●会話をマスターしよう

「会話が苦手」という悩みは中身がさまざまで、
語彙や話題に乏しいといったテクニカルに対処しやすいケースもあれば、
「異性との会話で緊張してダメ」
「うっかり変なことを口走ってしまうのではと不安でしゃべれない」
といった心因性の強いケースもあります。

今日は「沈黙が苦手」「間が怖い」という、相談件数がたいへん多い悩みを取り上げましょう。

 

●会話はトレーニング

会話には、トレーニングが必要です。

練習しなければ上手にはならないし、練習すれば必ず上手になります。

また、「どんな会話が良い会話か」といった知識面のチェックも大事で、
「気まずい間が起こらないように、間をおかずに喋り続けて盛り上げたら、
それが最高の会話」なんて思い込んでいたら、
よかれと思ってやった努力が裏目に出てしまいます。

会話トレーニングによって会話スキルを高め、
真の会話上手になりましょう。

トレーニングによって能力アップしないかぎり、
対症療法的に乗りきっても苦手意識は抜けず、
いずれまた気まずい場面に困惑すること請け合いです。

対症療法的に乗りきるとは、どんな方法か。

たとえば、「沈黙が気まずいから、話すことがなくなったら
スマホに逃げればいい」みたいなやり方です。

余談ですが、最近の日本人のスマホ事情は、
異様な光景を生み出していますね。

電車で一列に並んで座った乗客が、
全員スマホをいじっているシーンもめずらしくない。

自転車に跨がった人が道路の妙なところで停まっていて、
「おかしいな。あんなところで停まって。まあでも、どうせスマホだろ」
と推測しながら追い越しざまに見ると、やっぱりスマホをいじっている。

喫茶店やカフェに入れば、
一人でいるお客さんのほとんどがスマホを見ている。

まあ、スマホはツールに過ぎないので、
「スマホで何をしているか」は一人一人違うわけですが、
ここまで一様に同じツールを手にして、しかも凝視している姿には、
人類が何者かに操られているのでは、とも思える異様さがあります。

そんな中で、たまに紙の本をめくっている人がいると、
それだけで魅力的に見えるから不思議です。

 

●つい喋らされたのはどんな時?

「沈黙が気まずい」「間が怖い」あなたが、
なぜかどんどん喋らされてしまったのは、どんな状況ですか?

普段は饒舌なほうではないのに、
気づけば相手より自分のほうが喋りまくっていて、
むしろちょっぴり後悔したような場面はありませんでしたか?

おそらく、「相手が寡黙で、あまり喋ってくれない」ときでしょう。

「相手がテンポよく喋るから、つい乗せられて喋った」というより、
「相手の台詞が短めに終わるから、自分が次を続けないとと思って喋った」
ときのほうが、バンバン喋ったことでしょう。

つまり、沈黙は「二人とも黙っている」状態だからお互いのものなのに、
あなたが積極的に埋めたわけです。

なにか使命感のようなものに駆られて。

ここに「間を利用する」ヒントがあります。

二人で会話をしているのに、自分が黙っていて、
相手も黙っている状態になったとき、
「何かしないと」と思うのは、あるいは「何かできる」のは、
あなただけではありません。

黙ったまま心地よく一緒にいられるのは、
関係のごく近い相手だけですから。

だったら、相手にも「使命感のようなものに駆られて」
「間を埋めて」もらえばいいのです。

自分ばかり「なんとかしないと」「話題に詰まったら──」
「何に興味があるのかな」と必死に考えて、
間を埋めようとするから大変なのです。

その努力を半分程度にして、相手にも任せてみましょう。

あなたは黙って待つのです。

おもしろいように、今度は相手が間を埋めてくれますから。

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【大きな声を出す方法】声量の感覚を変えていく

「大きな声の出し方を教えて」
と発声法のレッスンを求められることがあります。

大きな声は発声の基礎技能ですから、
共鳴発声法を基礎から身につける気があるなら、
いくらでも教えられます。

ところが、問題はそこでは終わりません。
大きな声を出す能力があることは、すぐに本人にもわかります。
だから、「思いっきり出して」と言われれば、
「あ~」「お~」とかなり大きな声が出る。

ところが、そのまま話せないのです。

瞬間風速的に「わっ!」と大きな声を出すことはできても、
そのまま持続的に──たとえ30秒でも──ずっと話すことができない。

なぜか。

理由のひとつに、「大きな声で話している自分」に対する違和感があります。

小声でボソボソ話す自分には馴染んでいて、
無理することなくボソッと言葉を発するのは、心地よい。

しかし、声をしっかり張って、ピーンと共鳴の利いた声で
持続的に話している自分には違和感を覚え、
気恥ずかしかったり照れたりするのです。

発声では、「自分を変える」作業が不可欠です。
自分の内面が変わらなかったら、結局は元に戻ります。
「元」とは、声量も、話し方も、声の質も含みます。

今までの自分を卒業して、新しい自分を育てたいなら、
ある意味「過去の自分」にダメ出しをして、
「古い自分を否定し、新しい自分を歓迎」することになる。

それはそうですよね。大きな声で話せるようになりたいのに、
小声でボソボソ話していた頃の自分を後生大事に守っていたら、
新しい習慣など身につくわけがない。

かつての自分に未練はない。新しい自分を育てるのみ。
それができた時点で、急激に伸びていきます。

今までより大きな声で話したいなら、
「適切な声量」の感覚を変えていくトレーニングをしましょう。

* * *

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