ウクレレ弾き歌いが仕事や人間関係に役立つ理由

●人前で話すのが難しいのはなぜか

人前での発声・話し方トレーニングとして、ウクレレ弾き歌いのトレーニングが有効です。

「人前で話す」場面──挨拶、スピーチ、プレゼンテーション、会議での発言、司会など──での話し方やパフォーマンスの品質を高めたい方には、全員にウクレレ弾き歌いトレーニングをオススメしています。

人前で話すとき、声や表情やジェスチャーといった、内容以外の要素もたいへん重要な役割を果たしているため、すべての要素に意識を向けてはいられません。

だから「声への意識」が減って「うわずった、生っぽい声」になってしまったり、質問を受けたときに「厳しい表情」になってしまったりと、全体のコントロールが難しいのです。

「人前で話す機会があれば認知症にならない」とまで言われるくらい、「話す」(聞く)行為は実は複雑で奥が深く、脳をたっぷり使います。

そのため、「意識を向けなくても適切な動作ができる」部分を増やしていく必要があります。

車の運転を考えると、わかりやすいでしょう。

しかし、ウクレレ弾き歌いはそれだけでなく、「仕事」「人間関係」に広く役立つトレーニングになる理由があるのです。


●仕事や人間関係に役立つ技術や思考パターン

ウクレレ弾き歌いによって鍛えられる、あるいは再確認される、「仕事や人間関係に役立つ技術や思考パターン」をいくつか挙げてみます。

【論理的思考】

たとえばウクレレの運指(指使い)やコードの押さえ方を、ただ丸暗記して再現するのと、「こうだから、この指」「次はこのコードだからこの指を先に移動」のように論理的に解釈しながら練習するのとでは、成果に大きな差がつきます。

ウクレレに限らずすべての楽器がそうだとは思いますが、ウクレレはシンプルだから、トレーニングとしてわかりやすい。

難しすぎると、「小学生が背伸びして大学の数学をがんばる」みたいなもので、良いトレーニングにならないんですよね。

「わかる」感覚を維持しながらトレーニングを進めるのが最適なので、ウクレレはたいへん適しています。

【場との調和】

出す声や音は、場に影響を与えます。

会場と調和する声を出すと、あなたの話は聞く耳を持ってもらえます。

だから、良い話し方をするには、「共鳴」を体で感じ取る能力を高めていきたい。

ウクレレは、共鳴のための箱が体に接していて、しかも振動する弦を直接指で弾くので、「響き」に対して敏感になります。

響きに敏感になり、場との調和が高まると、職場でもカフェでも、居心地がよくなるはずです。

【身体機能の向上・維持】

年齢を重ねるにつれて、身体機能の向上や維持が大事なテーマとなります。

筋トレやストレッチなど、体の機能を高めたり維持したりする活動を習慣にすれば、何歳になっても快適に生活することができるでしょう。

ウクレレ自体は、心肺機能が高まるほどの運動量はありませんが、「考え方」として「体を鍛えることの重要性」を強化することができます。

たとえば、あるコードを押さえようとして、指がうまく動かないとき、現状をベースに考えて「私には無理」「ウクレレは向いてない」と解釈してしまうと、現状から「向上」「成長」することはありません。

日に日に衰えていきます。

「このコードを押さえるには、中指と薬指の間が開けばいいのか」とわかったら、頻繁にその形を押さえるトレーニングをしたり、ウクレレがなくても指で形だけ作ってストレッチをしたりして、「自分を変えていく」努力をする。

ピアニストなら誰でも、指のストレッチをかなりハードにおこなった経験があるでしょう。

「向き不向き」を考えるのではなく、「自分を変える」という姿勢を強化すると、人生を豊かにしてくれるはずです。

身体機能の向上・維持には、「トレーニングによって自分を変える」感覚が大切です。

【うまくいかないときの思考パターン】

生きていれば、うまくいかない、思うようにならない、ままならないことはたくさんあるでしょう。

今後も必ず出てきます。

そんなとき、何かがうまくいかないときに、どう考えて対処するか。

この「思考パターン」によって、ストレスが軽くもなれば、延々と長く繰り返されもします。

たとえば、複数の弦をまとめて押さえる「セーハ」がうまく鳴らないとき、「人差し指と親指で挟む力が弱い」と考えて、力任せにひたすらグイグイ押さえたら、仮にうまくいったとしても、疲れ果ててしまいます。

発声レッスンでいつもお話しするように、「楽にできればできるほど上手」なのです。

だから、方針として「パワーで乗り切る」ではなく「工夫する」「方法を考える」ようになると、上手になります。

手の角度を変えたり、押さえる指の位置を調整したり、肩や首の力を抜いたり、力を入れるタイミングを工夫したりして、最も力が要らない楽な方法でクリアしようとする思考パターンを育てると、仕事でも人間関係でも同じように対処できるようになるでしょう。

部下が指示通りに動いてくれないとき、「力任せにひたすらグイグイ押さえる」方針の人は、強い声や言葉で無理やり部下を動かそうとするかもしれません。

しかし、「できるだけ力を使わないで成功する方法」を模索する思考パターンが当たり前になっていれば、部下が自分から気持ちよく動いてくれる方法を考えようとするでしょう。

発声やウクレレって、素敵なことを教えてくれますね。

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弦楽器と爪の長さ

●ウクレレもギターも左手の爪は短く

先日、「声のサロン」のレッスン時に「左手の爪が長いと、弦がうまく押さえられない」という話をしました。

すると、直後に「爪を切って復習しています」と連絡があって、すごいなあと感心しました。

爪のお洒落をなさっている方にとっては、ある意味「楽器のためにお洒落を犠牲にする」わけですから。

プロの演奏家なら「そんなの当たり前」と一蹴するかもしれませんが、私としては美しく整ったネイルを見ると「ざっくりカット」と言うのに忍びないので、原則を伝えはしても、あとはご本人に任せることにしています。

とはいえ、ギターやウクレレ、バイオリンといった「弦を指で直接押さえるタイプの弦楽器」を弾く場合、弦を押さえる指の爪が長いのはプラスになりません。

「演奏を困難にする要素」にしかならないのです。

なのに、お洒落その他の理由で、「最適な状態」にするのを躊躇する人もいます。

実は私も、中学生の頃に右手の小指の爪を伸ばして、バイオリンの先生に咎められました。弦を押さえるのは左手なので、右手の小指なんて影響はないのですが、無意味に伸びた爪が先生に不快だったのでしょう。

「なんだその爪は。何に便利なんだ? 切ってこい」と言われ、次のレッスン日には短くしていましたが、切ることに何の抵抗もなかったとはいえ、「ダメなのかあ」とちょっぴり寂しかったものです。

それだけに、あっさり爪を切ったと聞いて、「この方は必ずうまくなる」と確信しました。

ちなみに、私の左手を撮影してみると、こんな感じです。

手のひら側から見ると、爪がまったく見えませんね。肉のみ。

爪の先は、指先から1~2mm短くなっています。「爪の先の白い部分がない切り方」と言えばわかりやすいでしょうか。白とピンク色の境界線で爪を切ります。

「深爪じゃないんですか? 痛くないですか」と聞かれたこともありますが、左手は子どもの頃からずっとこうなので、慣れてしまいました。伸びた状態が落ち着かない。

ここまでざっくりいかなくてもいいと思いますが、弦を押さえたときに「肉と爪の間に弦が入ってしまう」「指を立てると爪だけが指板に当たって肉が届かない」ようなら、そうならないように爪の長さを調節するといいでしょう。


●右手の爪はお好みで

ギターやウクレレなどの弦楽器では、弦を押さえる左手の爪は短くする必要がある一方、弦をはじく右手は「お好み」でいいと思います。

爪が少しあると、パリッとした明瞭な音が出ます。

指頭奏法といって肉部分のみを使う弾き方もあって、やわらかくて優しい音が出ます。リュート奏者も「爪ではなく指で弾きますね」と教えてくれました。

クラシックのギタリストが100人いれば100通りの爪の長さや形や手入れの仕方があるようなものですから、唯一の正解なんて無いのでしょうね。

お好みでいろいろ試してみたらいかがでしょうか。

私はというと、理想的な長さを模索して伸ばしたとしても、どうせすぐに長くなってしまうし、毎日のように熱心に手入れをしてベストを保とうとしても、割れたり欠けたりしたらガッカリするでしょうから(というより途端に弾きにくくなる)、右手の爪も「ほとんどない」状態で弾いています。

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きよしこの夜(Silent Night, Stille Nacht)でウクレレ弾き歌い

●1小節2ストロークから

では、3コード程度で歌える歌で、弾き歌いの練習をしましょう。

まずは「きよしこの夜」(Silent Night, Stille Nacht)。

クリスマスシーズンによく耳にする曲なので、季節はずれな気もしますが、季節を問わず良い歌なので、しかもここでご紹介したウクレレの教本にも出てくるので、弾いてみましょう。

なじみのある日本語でも、たぶん中学生の頃に覚えた英語版でも、原語のドイツ語でも、好きなバージョンで歌ってみてください。

弾き方は同じで、好きな言語を選んで歌えるなんて、お得ですね(ご用意した楽譜にはドイツ語が入っています)。

こちらに楽譜のPDFをご用意しました。ダウンロードしてお使いください。

教本のコードとは、ほんの少しだけ違います。もともとシンプルな曲ですが、もっとシンプルなコードにしてあります。

楽譜の下にある3コードをまずは確認してください。

C、F、G7です。

※ギターで弾き歌いに挑戦している方は、最初は「F」が難しいので、こちらの楽譜をお使いください。D、G、A7で弾きます。

「1小節に2ストローク」というシンプルな弾き歌いからやってみましょう。

6/8拍子の曲なので、2拍子系ですね。だから1小節で2回、親指でポロロンとゆっくりストロークします。

どのタイミングでストロークするか、わかりますか? 出だしでいうと、「Stille」で1回、「Nacht」で1回。次の小節は「heilige」で1回、「Nacht」で1回。

細かいことは考えず、感覚的にやっても、自然とこのタイミングになるでしょう。

コードが書いていないところは、前と同じコードを続けます。たとえば、2小節目は「C」ですね。

最後から2つ目の小節だけ、小節の途中でコードが変わります。「C」で入って、2拍目は「G7」になる。

わかりにくいところがあったら、何でも質問をどうぞ。

●必ず声を出しながら

発声は最初は「口ずさむ程度」でいいので、ただし必ず声を出しながら練習します。

声が出しにくい状況だったら、ハミングでもいいので、「ウクレレのみにかかりっきり」にならないようにしましょう。

最初にコードフォームを確認しながら押さえる練習をする段階はいいとして、「さあ、それでは弾いてみよう」となったら、必ずメロディーを口で出しながら、できれば歌詞を乗せながら演奏します。

何回か(10回ぐらい)繰り返してみて、難しいところや、気づいたことなどあったら、メールで聞かせてください。

そのコメントを次の進め方に反映させていきます。

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弾き歌いのススメ

●せっかく発声トレーニングをしているのだから弾き歌い

「声のサロン」で発声トレーニングをしていると、声が楽に出るようになってきます。

話し声を良くしたいとレッスンを受け始めた方が、初めのうちは「歌は下手だから歌いたくない」「恥ずかしくてとてもとても」なんて言っていたくせに、良い声が気持ちよく出るようになってくると、ハマる。

数年でコンサートホールのステージに立つほどになるのだから、発声や歌にはスゴイ魅力があるのですね。

そんな段階を迎えた方にオススメしたいのが、「弾き歌い」(ひきうたい)です。

「弾き唄い」と書かれることもあります。「弾き語り」という言葉もありますね。厳密な区別があるわけではなさそうですが、ざっくり見ると、クラシック音楽では「弾き歌い」、ポピュラー音楽では「弾き語り」、日本の長唄などで「弾き唄い」が使われているケースが多いようです。

ここではジャンルや楽器を区別せず、「歌唱と伴奏の分担をしないで,同一人が伴奏楽器を弾きながら歌を歌うこと」の意味で「弾き歌い」を使うことにします。

せっかく発声トレーニングをするなら、コツを覚えてぜひ「弾き歌い」に挑戦しましょう。


●弾き歌いのメリット(魅力)とは

弾き歌いには、メリットがたくさんあります。

無伴奏(アカペラ)で歌うのは難しいですね。音程が安定しにくい、粗が目立つ、音楽的になりにくい、等など。そこに楽器による伴奏が付くと、途端に音楽になります。

とはいえ、歌をなさる方ならよくわかるように、伴奏者を見つけたり依頼したりするのは簡単ではありません。手間がかかるしお金もかかるし打合せのスケジュール調整なども「相手があってのこと」なので気を遣う。

それが一人でさらっとできるとなれば、いくつもの気がかりが一発で解決してしまいます。

ステキな趣味もできる。

「しゃべり」は趣味にはなりにくいでしょうが、「音楽」となると一生ものの趣味になります。すでに多趣味な方にはニーズがないかもしれませんが、「手を広げる」のではなく「すでに取り組んでいる活動を掘り下げたところにある活動」であれば、「スピーチ」「プレゼンテーション」「会話」などにもプラスの相乗効果がある、一石二鳥の趣味になります。

しかも、一生にわたり質的に年々高まっていく趣味になりうる。

「昨日ハードに声を出して嗄声ぎみだから、今日は発声練習をセーブしないと」「風邪ぎみで声が出ない」というタイミングなら、伴奏のほうを丁寧に練習すればいい。

そもそも弾き歌いをするのは、音楽をなさる方の中でもごく少数なので、楽器やジャンルによっては「世界に数人しかいない活動」にもなる可能性があります。たとえば「アコーディオンを弾きながらナポリターナを歌う」人は、全国でも数名もいません。

誰にとっても、プロの演奏家にとっても、極めてハードルが高い弾き歌い。しかしすでに発声トレーニングをしているあなたにとっては、現状ですでにハードルが低くなっています。つまり、あなた向きなのです。

やりがいがあると思いませんか?


●弾ける楽器がないなら

では、あなたの弾き歌いスタイルを探してみましょう。

あなたの歌のパートナーになりそうな楽器は、何を思いつきますか?

まずは自分が弾ける、馴染みのある楽器から検討していきましょう。

ピアノ? いいですねえ。

アコーディオン? 素敵です。

バイオリン? 顎で楽器を支えるから、歌にとって有利とはいえませんが、工夫すればできるかもしれません。

多くの人がやっていないスタイルほど、やりがいがありますね。

打楽器? おもしろいかもしれない。メロディーや和音の助けにはなりませんが、プリミティブな音楽の雰囲気が出せそう。

歌のパートナーなので、管楽器は難しそうですね。ハーモニカや鍵盤ハーモニカなど、口を使う楽器も弾き歌いの伴奏には不向きといえます。

ギター?

最適でしょうね。ガットギター、フォークギター、ウクレレ、マンドリン等など、ギター型の楽器は弾き歌いには最も適しています。

フォークソングをアコースティックギターで弾き語り、というのはごく自然なスタイルですね。

弾ける楽器が今のところないとしたら、ギターがお勧めです。簡単なコードをいくつか覚えれば、コツだとか方法だとかこだわらずに、簡単な伴奏ならすぐにできます。

ほかにも、ハープとかベースとか三味線とか大正琴とか、弾き歌いを試してみたい楽器を思いつくかもしれません。

何か思いついたら、「声のサロン」のレッスンのときにでも話を聞かせてくださいね。楽しみにしています。


●歌うジャンルは?

歌うジャンルは、何にしましょうか。

「弾き歌い」というスタイルがそもそも少数派なのだから、堅苦しく考えることはありません。

ボタン式アコーディオンだからフレンチポップスだろうとか、三味線だから日本の歌を歌わなければならないとか、そんな決まりはありません。

「声のサロン」で発声トレーニングをしているので、まずはレッスンで取り上げている歌に挑戦するのがスムーズかな、と思います。

ナポリターナ、イタリア古典歌曲、クリスマスソング、日本の唱歌など、レッスンで歌った中から好きな歌を選んでみるといいでしょう。

そのうち、あなたに合ったスタイルに育っていきますよ。

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弾き歌いは「声がメイン」

●弾き歌いに驚きの反応

ここのところ、「弾き歌い」について話す機会があって、このサイトでも取り上げたら、予想以上の反響がありました。

弾き歌いなんてマニアックな活動には、特別に熱心な会員のほか、一部のマニアぐらいしか反応しないだろうと予想していたのです。

ところが、楽器の選択に関する相談メールがすぐに何通か届いただけでなく、「声のサロン」会員ではない方々からもご相談をいただいたりして、関心の高さに驚きました。

そこで今日は、「弾き歌い」についてもう少し掘り下げてお話しします。楽器の選び方や今後の練習の参考にしていただけたら幸いです。


●楽器と歌はどっちがメイン?

「弾き歌い」は、文字通り「楽器を弾きながら、歌う」わけですが、歌と楽器はどちらがメインだと思いますか?

「そんなのは演奏者によるのでは?」と思うでしょうか。まあ確かにそのとおりで、決まりなどないのだから演奏者が自分で決めたらいいのですが、あなたに「声のサロン」(あるいは音色塾)としてあなたにお勧めするスタイルとしては、メインが決まっています。

「歌がメイン」です。

発声トレーニングの一つの展開として「弾き歌い」を取り入れるわけだから、歌が優先と考えるのは自然かもしれませんが、それだけでなく、演奏の形態として「逆では格好がつかない」実態があるからです。

先日、ある演奏家がこんな話をしてくれました。

彼は楽器をソロで演奏することが多いのですが、あるコンサートで「新たなスタイルを模索して」「パフォーマンスの幅を広げて喜んでもらおう」として、楽器を弾きながら歌を入れてみたのだそうです。

1曲だけ弾き歌いをしたわけですね。

すると(切ない話なのですが)帰り際に会場の主催者から「次回は歌は無しでお願いできますか」と申し訳なさそうに頼まれてしまった。

それだけでなく、後日馴染みのお客さんから「歌はなかなか、習わないと難しいよね」と言われ、早まったことをしたと悟ったそうです。

歌(人の声)は存在感がたいへん大きいので、トレーニングしていない状態で「気軽にちょっと入れてみる」ようなものではないんですよね。

喩えるなら、カレーみたいなものでしょうか。鍋でもチャーハンでもピッツァでも、カレーを入れたら「カレー味!」にしかならない。カレーは隠し味にはならない。ほかでリカバリーが効かなくなる。

実はこのようなエピソードは、彼だけでなく、ほかにも複数の演奏家から聞いたことがあります。

楽器を弾きながら試しに声を出してみたら、「歌わなくてもいいんじゃないですか?」「楽器だけのほうが断然イイ」と、なんだかよくわからない感想をもらった話。

ライブ会場に来ていた先生(楽器を教わった先生)から、「なぜ歌った?」「もったいない」と叱られた話。

歌と楽器が同時にある場合、「歌の存在感が勝つ」ので、しっかりした発声でうまく歌わないと、全体を台無しにしてしまう可能性があるんですね。


●歌に楽器を添えるのはOK

ところがです。逆はなぜか、うまくいく。歌手が楽器をたわむれに加えるのは、たいへん好意的に受け入れてもらえるようです。

歌手がなんとなく思いつきで、ほんの数日だけ見よう見まねでコードを覚えただけのギターを掻き鳴らしながら、いつものように歌ったら、「いいですね~」「なんだか新鮮ですね」と喜ばれた。

ハンド(サンド)シェイカーでチャッチャッとリズムを刻みながら歌ったら、「リズムが加わるだけでイキイキする」「楽しかった」と褒められた。

つまり、もともと歌で形になっていたところに楽器が加わるのは、たとえ楽器の技術が高くなくても、うまくまとまりやすい。

楽器だけで形になっていたところに歌が加わるのは、歌の技術が高くないと、全体のまとまりや質を損ねてしまう。

だから、「歌がメイン」です。

まあ、それはそうですね。「声のサロン」は、楽器の教室ではありませんから。

だから弾き歌いは、歌のトレーニングの味付けに、軽く楽器の伴奏をつけてみる、くらいに考えるといいでしょう。

伴奏のはずの楽器にてこずって、発声トレーニングの時間が削られたのでは元も子もありませんからね。

そう考えれば、気軽でしょう?

見方を変えれば、あなたはすでに、何よりもパワフルな楽器(つまり歌)をやっているわけです。


●楽器ごとにメリットとデメリットがある

「この楽器で弾き歌いはできるでしょうか」「私の手に負えるでしょうか」と、すでにいくつかアイデアが寄せられています。

ピアノ、アコーディオン、ウクレレ、そしてなんと、琵琶。

どんな楽器も、もともと弾き歌い用に最適化して作られたわけではないので、ちょっとした共通のコツがあるだけでなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。

まず、複数の方が挙げてくださったピアノは、完成度の高い、「楽器の王様」みたいな楽器なので、弾きこなせればすばらしいパフォーマンスになるでしょう。

「ピアノで弾けない曲はない」というくらいに、本当にすばらしい楽器ですよね。

ただし、ほかの楽器と比べて、一から始めるとしたらかなりの労力を要する、とっつきやすそうで相当難しい楽器といえます。

今までにピアノを相当弾いてきた方でないと、歌にちょこっと伴奏を加えてみる程度の感覚では済まないでしょう。ピアノのレッスンに別途通わなければならないとしたら、「発声を掘り下げる」のではなく「手を広げる」ことになってトレーニングの一点集中が削がれることにもなりかねない。

すでに弾ける方は、ピアノによる弾き歌いの弱点として「横向きになりやすい」を知っておきましょう。聞き手から見ると、演奏者が右方向を向いているスタイルになりやすいので、発声技術をしっかり高めないと、声が届きにくくなります。

共鳴発声法をしっかり身につけましょう。

アコーディオンはどうでしょうか。コードボタンを押せば和音が出るので、伴奏にはたいへん有利です。ピアノで3~4個の鍵盤を押すのと同じ和音が、ボタン1個押さえて蛇腹を動かせば出せる。

まさに伴奏のための楽器、みたいなものですね。

ただし、デメリットとしては、楽器が重い。機械みたいなものなので、重量物です。そして、値段も数十万円を覚悟しなければならないので、「とりあえず試してみる」にはハードルが高いかもしれません。

ウクレレは、小さい、軽い、和音が得意、といったメリットが実にありがたい。どこにでも持ち歩けるし、こだわらなければ安く手軽に手に入る。

ギター型の楽器として、手にしやすい選択肢といえるでしょう。

デメリットとしては、音域が狭く、ごく簡単なコードで演奏しようとすると、声域の制限がある。先日もウクレレの弾き歌いを聴かせてくれた会員が「Cを中心とする簡単なコードで弾くと、最高音がドと低く、ちょっと歌いづらい」と話していました。

まあでも、使えるコードをがんばって増やせば、共鳴の効いた良い声が出しやすい音域に移調することはできるでしょう。

ほかに、音量の問題はありますね。楽器が小さいだけに音量も限られるので、共鳴発声法を高度に身につけた人がしっかりした声を出すと、伴奏が聞こえなくなってしまいます。

そのときはアンプを使うなど電気的な助けを借りる方法がありますが、いわゆる「生音オンリーの場」では難しいこともあります。「小さい、軽い」という大きなメリットが、同時に「音が小さい」というデメリットにもなっているわけです。

といっても、コードを押さえてジャンジャン激しく掻き鳴らせば、大きめのコンサートサイズ、テナーサイズのウクレレなら結構な音量が出せます。

そして、琵琶ですが、すでに琵琶を弾きこなしているのであれば、なんとも面白い、実にユニークな弾き歌いができそうですね。

ぜひ実現していただきたいと思いますが、これから琵琶を始めるのはなかなかハードルが高そうです。楽譜がそもそも違うので、「声のサロン」で歌っているような歌の伴奏に対応するには、西洋音楽を琵琶用に記譜する手間がかかります。

それがどの程度の手間なのかは私にはわかりませんが、三味線と琴の演奏家に以前に聞いたところによれば、楽譜が異なるジャンルの楽器同士で演奏する場合のアレンジは「簡単ではない」という方と「わりと得意なんです」という方がいたので、演奏家次第なのかもしれません。

──と、このようにあらゆる楽器にメリットもあればデメリットもあるので、メリットをいかに活かし、デメリットをいかにカバーするかを工夫しながら、歌に味付けをしていきましょう。

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弾き歌いにはどんな楽器が向いているか(共鳴発声法で弾き歌い)

●弾き歌いの伴奏楽器に必要な条件とは

「弾き歌い」について立て続けに書いていますね。

今までブログに書いたことはなかったのですが、こんなに反響があるとは予想していませんでした。

弾き歌い大好き人間の私としては、「共鳴発声法で弾き歌い」をする方が増えてくれたらうれしいので、調子に乗って書きまくっています。

前回、「どんな楽器にもメリットとデメリットがある」として、候補に挙げてくださった楽器についてメリットとデメリットの両方をお話ししましたが、デメリットにも触れたせいで「オススメとはいえない」という印象を与えてしまったかもしれません。

まったくそんなことはありません。私が弾き歌いをしたことのある楽器はアコーディオンとギターとウクレレですが、どれもオススメです。一から始めるなら、ウクレレは最もオススメです。

とはいえ確かに、どんな楽器でも良いわけではなく、楽器の特性によっては弾き歌いの伴奏に向く向かないはあります。

今日は「弾き歌いの伴奏楽器に必要な条件」について考えてみましょう。

だいたい次の条件が揃うと、弾き歌いに有利かなと思います。必ずしも全部が揃わなくても、いくつか満たせば弾き歌いができるのではないでしょうか。

①和音が出せる
②楽に弾ける
③リズムが刻める

一つずつ見ていきましょう。


●和音が出せる

やはり伴奏をするからには、和音がほしいですね。

ピアノやギターのように和音が得意な楽器は、弾き歌い向きです。

バイオリンについて、「顎で楽器を支えるから、歌にとって有利とはいえないが、工夫すればできそう」「多くの人がやっていないスタイルほど、やりがいがある」なんて言いましたが、「和音が苦手」という特性ゆえに、難しいのは確かでしょう。

バイオリンも重音といって2音ないし3音を同時に鳴らすことはできますが、得意とはいえません。

単音でも、歌と掛け合いのような演奏はできますが、「2人でそれぞれ違うメロディーを歌う」のを一人二役するようなものなので、難易度はかなり上がります。

輪唱の一つのパートを歌い、別のパートを楽器で弾くようなイメージですから。

「和音が出せる」は、ぜひ満たしたい条件です。


●楽に弾ける

どんな楽器も本格的に取り組めば「簡単な楽器」なんて無いと思いますが、「わりと手軽」な楽器と、始めるハードルが高い楽器はありますね。

ウクレレやアコースティックギターは比較的ハードルが低く、パイプオルガンはハードルが高いでしょう。

新潟にはりゅーとぴあにすばらしいパイプオルガンがありますが、私が今から始めて数年でそこそこ弾けるようになるとは思えない。

「楽に弾ける」という、楽器をナメているような条件を挙げましたが、あくまでも「弾き歌いの伴奏楽器として」という意味です。

弾き歌いは一人二役なので、2つの役割が両方とも難し過ぎたら、厳しいでしょう。楽器に全力を尽くしてしまったら、歌えません。

演奏に要する「意識の割合」をできるだけ低く抑えられれば、弾き歌いが現実的になります。

ピアノでも、クラシック音楽を楽譜どおりに弾くには意識のかなりの割合を「持っていかれそう」ですが、簡略化してコードで押さえたら意識の割合が下がり、歌いやすくなるはずです。

ギターやウクレレは、「コードを押さえてストローク」なら、すぐに慣れるでしょう。しゃべりながらでも弾けるくらいになれば、もう弾き歌いができるレベルです。

感覚的には「3割の意識」ぐらいで気軽にさらっと弾ける状態になると、弾き歌いが楽に、楽しくなります。


●リズムが刻める

リズムを刻むのが得意な楽器と、そうでもない楽器があります。

歌の伴奏には、リズムを出せるほうが役に立ち、しっくりきます。

和音もメロディーもない打楽器でも、歌に合わせてリズムを刻むだけで、なんとなく馴染むのは、やはり音楽にはリズムが大事だからです。

リズムは「音楽の3要素」の1つですからね(残りの2つはメロディーと和音)。

バイオリンや二胡などの擦弦楽器(弓などで弦をこすって鳴らす楽器)は、リズムは苦手ですね。弓を跳ねるような奏法で可能ではありますが、アタックが弱いのでリズムが明瞭になりにくい。

ギターのような撥弦楽器(弦をはじいて鳴らす楽器)は、アタックがしっかり出せるので、リズムは得意です。ストロークでチャッチャッと刻んだり、ボディを指で叩いたりすれば、もうほとんどリズム楽器です。

ピアノもリズムは余裕で刻めます(ピアノってスゴイ楽器ですね)。


●歌は共鳴発声法で

ざっくりですがこうして分析・検討してみると、ピアノとギター(ウクレレ含む)が弾き歌い(弾き語り)に多く使われてきた理由がわかりますね。

実際、ピアノ、ギター、ウクレレは、弾き歌いがしやすい三大楽器で、弾き歌いをしている人口は多い。

ストリートで弾き語りをしている人はたいていギターですね。

見方を変えれば「どこにでもある、ありふれたスタイル」ともいえる。

「だとしたら面白みがない」と感じますか?

でも、ご心配なく。あなたの弾き歌いが「ありふれたスタイル」にならない理由がちゃんとあるからです。

それは、「共鳴発声法」。

日本発声協会も採用するこの発声法を習っているあなたは、声が違います。

マイクなしで通るしっかりした発声で、生の声で、しっかり歌いながら弾き歌いをする人は、きわめて少数しかいません。

ピアノが弾ける人は世の中に大勢います。ギターの達人も大勢いる。どうやって弾いているのか間近で見てもわからないような超絶技巧の持ち主も、何人も知っています。

しかし、「発声」は別。

あなたは発声トレーニングで日に日に声の質を、声の価値を高めています。

「声のサロン」「音色塾」が勧める弾き歌いなのだから、声を大切にしたスタイルです。

先日、「楽器の演奏家がコンサートで、たわむれに歌を混ぜたら、しくじった」ケースを紹介しましたね。発声は自分の体を楽器にして、しかも使いこなさなければならないので、楽器店に並んでいるような、すでに出来上がっている楽器とは違います。

ちゃんとトレーニングして、技術を身につけて、体も作らないと、たとえば「ちょっと高い音になると、顔を歪めて叫ぶような調子になる」「演奏効果としてではなく、出せないからという理由で裏声に逃がし、流れの断絶が起こる」といった弾き語りになってしまいます。

あなたは共鳴発声法で、しっかり歌うのだから、それだけでもう「どこにでもある、ありふれたスタイル」ではありません。

すでに弾き歌いを始めた方は、「発声技術の向上によって、弾き歌いを質的に高めていく」のがいいでしょう。

せっかく時間をかけて取り組んでいくのだから、難しいけれど年々クオリティが高まっていくような、素敵な弾き歌いをしていきましょうね。

さあ、始めますよ。

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弾き歌い用にウクレレかギターを手に入れよう

●ウクレレかギターを手に入れよう

みなさん動きが早いですね。

「ウクレレはどんなのを買ったらいいですか」「クラシックギターを買うとしたら、いくらぐらいのがいいでしょうか」といったお問合せをいただいています。

弾き歌いについて記事を書いてきて、実際に始めてみようと動き出そうとしている方には楽器の選び方について僭越ながらアドバイスしようかと思っていたら、中には「ウクレレ買いました!」なんて方もいて、ビックリ。

早い!

そこで、「歌をメインとする弾き歌いのお供」としてのウクレレ、ギターの選び方についてお話ししますね。

すでに購入済みの方は、お手元の楽器と食い違うようなことが書いてあっても、ご心配なく。大事なのは「とりあえず始める」ことであって、「始める」ことに決めたのであれば、あとはなんとでもなります。


●ウクレレの選び方

さて、まずはウクレレから。

ソプラノ(最も一般的)またはコンサート(少し大きめ)というサイズのウクレレで、安いものをまずは手に入れましょう。

「安い」というのが難しいですね。自分の中に基準がないと、5千円が安いのか、5万円が安いのか、わからない。

「いやいや、5万円は高いでしょ」と言いたいけれど、楽器ならそのくらいは普通なのかもしれないから怖いんですよね。

ご心配なく。数千円のウクレレで十分です。コンサートウクレレでも7千円、8千円くらいの楽器がいくらでもあります。

楽器店で見たり触ったりして、どうしても気に入ってしまったら、1万8千円くらいまでなら出してもいいかな。でも、これから初めてウクレレを始めるというのに、15万円なんて楽器は検討しないようにしましょう。

やっぱり楽器ですから、良いものは良いんです。良い音がするし、長く鳴る。だから、楽器屋さんも「いや~、やっぱ良いものは良いっすわ~」と高い楽器を並べてくれたりする。鳴らして聴き比べると、「確かに違いますね」と感じて、欲しくなるかもしれない。

しかし、それはまた、仮にウクレレにどっぷりハマって、コレクションでも始めたくなったり、一生のお付き合いをする楽器を思いきって手に入れたくなってからでいいではありませんか。

それより、「せっかく買うならちょっと良いものがほしいから、また今度にしよう」と決断を先送りにするほうがもったいない。

「なにはともあれ、とりあえず始める」のがいい。私としては、ウクレレの弾き歌いに挑戦したいのに楽器の入手に躊躇している方には、「どれでも好きなウクレレを一本持っていっていいですよ」と差し上げてもいいくらいの気持ちなんです。

気持ちは。

でもそうなるとレッスンで使う楽器が無くなってしまうから、なんとか自前で用意してください。

数千円でOKと聞いて、少しは安心しましたか?

ちなみに、値段以外の要素としてペグに触れますと、「ギアペグ」タイプのものがオススメです。ペグとは、弦を巻いたり緩めたりしてチューニングする部品のことです。

ギアペグとは、歯車が付いているタイプで、裏から見ると歯車が見えるのですぐにわかります。外見的な特徴としては、ヘッドの部分からつまみが横に飛び出している。

これに対して、もともとはウクレレのペグといえば「ストレートペグ」でした。ギアが付いてない、つまみを回した分だけダイレクトに弦が巻かれるタイプで、バイオリンと同じですね。

このタイプはチューニングが難しいんです。ちょっと回すだけで音がグンと高くなったり低くなったり。ペグ自体が固まったり緩んだりして、ドライバーが必要になったりもします。

ストレートペグは、つまみが横ではなく裏に飛び出しているので、前から見たときにスッキリしていてイイですね。また、金属の部品が少ない分、軽い。ウクレレの魅力の一つが「小さくて軽い」ことなので、ストレートペグのほうが「ウクレレらしい」スタイルだとは思います。

ペグははっきり言って「好み」ではありますが、しかしこれから始める方にとって、チューニングの簡単さ、正確さはそんな魅力を補って余りあるメリットです。

チューニングについてはまた機会を改めてお話ししようと思っていますが、「迷ったらギアペグ」がいいでしょう。


●ギターの選び方

続いて、ギターです。

弾き歌いのギターとしては、アコースティックギター(フォークギター、鉄弦ギター、アコギ)と、クラシックギター(ガットギター)が候補になるでしょう。

本来の「アコースティック」は「音響的な」→「電気的な装置を使わない」という意味なので、クラシックギターもアコースティックなのですが、「アコースティックギター」というと、スチール弦を使うフォークギターを指すのが今は一般的です。

さて、ではどんなギターをお勧めしたいかというと、「小さめのクラシックギター」です。

少しギターに触れたことのある方ほど、「クラシックギターは格調高くて、ちょっととっつきにくい」「アコギのほうが気軽にジャカジャカ鳴らせる」と感じているのではないでしょうか。

確かにそのとおりですね。街で「ギターで弾き語り」をしている人はたいていアコースティックギターです。

シャーン、ジャーンと鳴るあの感じ、音の伸び、そして音量。コードを押さえて掻き鳴らすだけで、なんとなく格好がつく。私も学生時代はもっぱらアコースティックギターを弾いていました。

ただ、「あきらめて手離す人が多い」のもまた、アコースティックギターの特徴ではないでしょうか。

「簡単なコードを押さえてジャカジャカ」のレベルで物足りなくなり、次のレベルを模索したときに、途端に難易度が急上昇するのが、アコースティックギターなんですよね。

そして、指が痛い。これは大きいと思います。弦の張りが強いくせに細いので、左手の指が切れそうになる。そして指先がタコのように硬くなる。

「早くもコードFのセーハで人差し指の痛みに耐えきれず挫折」というケースもめずらしくないようですよ。ということは、「わずか数日」でしょう。

手や指への負担は小さいほうがいいですよね。歌がメインなのだから、指が痛い、手が疲れた、楽器が重い……といった余計な要素はできるだけ無くしておきたい。

すでにアコギに馴染んでいる方はともかく、これからギターに触る方のための「弾き歌いのお供に末永く付き合っていきたいギター」としては、「小さめのクラシックギター」にローテンションの弦を張って弾くスタイルがオススメです。

優しくて(簡単という意味ではありませんが)、やわらかくて、体が楽です。


●ミニギターという弾き歌いのベストパートナー

ギターは大きいので、ウクレレよりは値段が高くなります。

それでも今回の用途では2万円以内で探せるといいですね。私が初めて買ってもらったアコースティックギターが1万6千円ぐらいだった気がします。

ギターをソロで演奏していこうと思うなら、もう少し高いのをと勧められるかもしれません。ギター教室で先生に尋ねたら、「初めはこのくらいから」とたぶん5万円ぐらいのギターを紹介されるでしょう。

ウクレレと同じで、楽器だから良いものは鳴りが違うのは確かです。だからこそキリがないし、踏ん切りがつかないのはもったいないので、とにかく手に入れてスタートしてしまうのがいい。

先ほど「小さめのクラシックギター」と書きましたが、もう少し手がかりになる話をしておきます。

弦長480mmとか580mmといったサイズのクラシックギターがあります(標準は650mm)。「ミニギター」「ショートスケールギター」といった言葉で楽器店に問い合わせれば、きっと見つかります。

子供用として成長に合わせて複数のサイズが用意されたわけですが、大人でも体格や好み、用途に合わせてこういったギターを好んで使っている方が結構います。

見た感じとしては、480mm(1/4サイズ)はすごく小さくて(このサイズ感が妙に好き)、パッと見「おお、小さい」とわかります。

580mm(3/4サイズ)は標準サイズより一回り小ぶりかな、という感じ。ギターを見慣れていない方はたぶん気づかない。でも並べて比べると「やっぱり小さいんだな」とわかる。

その中間に530mm(1/2サイズ)というのもあります。

私はアリア(Aria。メーカー名です)の480mmスケールを初めて見たとき、「なんだ、この素敵な楽器は!」と一目惚れしました。小型なのにギターとしての機能がちゃんと揃っている。ギターに限らず、精巧なミニチュアって「ちゃんとドアが開くミニカー」みたいな魅力があって、なんかイイんですよね。

ただ、小さい楽器ほど、チューニングは甘く(不正確に)なります。フレット(弦に対して直角にたくさん並んでいる金属の棒)の間隔も狭くなるので、指が窮屈になります。

また、「小さいほど軽くて便利」というわけにはいかず、体格に対してあまり小さい楽器は安定せず、良い姿勢が保ちにくいので、フォームに工夫と注意が要ります。

480mmに一目惚れしたと言いましたが、使いこなせるのは小柄な女性でしょう。私は480mmスケールのアリアが大好きでよくいじりますが、「楽に弾ける」のは580mmスケールのギターです。

高い楽器に手を出さない姿勢には、「気軽に何本か所有して試していける」メリットがあると思います。

いきなり思いきって10万円弱ぐらいの楽器を買って「私はこれを一生のパートナーとするんだ」と誓ったとしたら、「もう少し小さい楽器がほしかったのに」「もう少し大きい楽器も試してみたい」と思っても、もう身動きが取れないではありませんか。

「3年ぐらい弾いたら、また次のギターを考える」「同じギターを買い足してもいいかな」くらいの気軽さで(実際には次のギターなんて買わなくていいんですよ)、小さめでしっくりくるものを手に入れてみてください。

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「ウクレレとギター、オススメの教本はありますか?」(弾き歌い)

●オススメの教本は?

ウクレレを初めて手にした方から、「オススメの教本はありますか」とご質問をいただきました。

どんな教本でも一通りの基本は押さえてあります。適当にピンときたものを買っていいと思いますよ。

ウクレレのソロ演奏をバリバリやれるようになりたい、というなら吟味したほうがいいでしょうけれど、「歌をメインとする弾き歌いのお供」ですから、「この教本にしか書いていないウクレレの奏法テクニックが必要」なんてことはありません。

1冊ご紹介しておきますが、すでに何か購入済みであれば、新しく買い直さなくても結構ですよ。ただ、声のサロンや音色塾の会員で「レッスンでするとおりに正確にみっちりやりたい」という方は、持っていて損はないでしょう。

『メロディ→伴奏→ソロの3ステップ方式でソロウクレレを誰でも弾けるようになる本』(佐藤 雅也 著/リットーミュージック・ムック)



●ギターの教本は……

ギターの教本にも、良いのがあります。

『これで弾ける クラシック・ギター奏法マスター【初級編】』(平倉 信行 著/ドレミ楽譜出版社)

先ほど確認したらすでに絶版になっているようでガッカリしかけましたが、いろいろなところでまだ手に入るようなので、こちらをオススメとしておきます。

●ただし「弾き歌いの教本」ではありません

ただし、ウクレレもギターも「弾き歌いの教本」ではありません。

軽い「弾き語り」用なら、J-POPなどの楽譜がいくらでもあるのですが、あなたに挑戦していただきたいのはそういうものではなく、しっかりした発声(共鳴発声法)で歌う「弾き歌い」です。

だから、教本はないのです。

以前の記事で、
「楽器やジャンルによっては『世界に数人しかいない活動』にもなりうる」
「たとえばアコーディオンを弾きながらナポリターナを歌う人は、全国でも数名もいない」
とお話ししましたね。

あなたが取り組むのはそういう活動です。教本などあるわけがありません。

そんな稀で難しい活動のための「パーツ」として、各楽器の基本的なテクニックを身につけるための教本だと思ってください。

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