●人を動かすパワーを高めよう
受講者のみなさんから届いた文章を読んでいて、講師の私が楽しませていただいています。
今回のテーマは「トレーニングを勧める」でしたね。みなさんそれぞれに思い入れのあるトレーニングを取り上げたり、専門性の高い立場からの見解が披露されていたりと、読んでいて実に楽しい。
ぜひこの調子で有益な情報発信をしたり、文章力を仕事に活かしたりしていってください。
今日はあなたの文章の「人を動かす」力を高めるポイントを2つ取り上げます。
現状のご自分の文章を見直して、さらにパワーアップさせてみましょう。
2つのポイントとは、「直接的なメリットが先」と「スパッと言い切る」です。
●直接的なメリットが先
まず、「直接的なメリット」に言及できていますか?
講座の中で「メリットの先」「メリットとベネフィット」「読み手の大切な人にとってのメリット」などをお伝えしたせいか、逆に「直接的なメリット」が弱まってしまったようです。
直接的なメリットは、先に、明確に、言葉にしましょう。
たとえば、
「四股を踏む」→「足腰が強くなって何歳になっても健康で歩ける」→「介護要らずで家族が幸せ」
であれば、「足腰が強くなって何歳になっても健康で歩ける」が直接的なメリットです。
ここが曖昧なまま「四股を習慣にすることで、家族に世話をかけない老後が……」と続け、さらに介護がどんなに大変か、生活に負担をかけるかといった話を展開しても、文章に人を動かす力が出ません。
直接的なメリットを明確に伝えてあると、さらにその先のメリット(いわゆるベネフィット)や、大切な人にとってのメリットを読んだときに、意識の中で「歩けるって大事だな」「だから足腰が大事なんだな」「だから四股なんだな」とつながりが強化され、行動を促します。
……と、実際にはメリットがしっかり書けていた方の文章から題材をお借りしました。
英会話の先生なら、「英会話ができるようになったら、どんな良いことがあるか」をハッキリ伝える。
それをせずに「こういう特別なメソッドだから英会話がマスターできます」の根拠を並べても、読み手はなかなか動いてくれません。
もっとも、直接的なメリットが明白かつ異論がないものであれば、「だから、できる」で足りるので(受験業界で「合格できる!」など)、自分自身のケースをしっかり考える必要があります。
文章は、だから奥が深い。コミュニケーションですからね。この言い方ならいつでもどこでも完璧、なんて型はありません。
●スパッと言い切る
次のコツは、「言い切る」。
スパッと言い切りましょう。
日本人は控えめで、謙虚を美徳と考える人が多いので、はっきりスパッと言い切らない、歯切れの良くない文章が多く見られます。
勇気をもって言い切りましょう。
たとえば、「○○をすれば、シフォンケーキが上手に膨らみます」とコツを教えるとします。
この時、
「○○をすると、私の場合はうまくいくことが多いので、よかったら試してみてください。ほかにも良い方法はあると思いますが、わりと成功率は高いです。水分量と温度設定も関係するので、一言では言い切れないし、ネットで見たら逆に○○は良くないという説もあるそうなので、まあ最後は自己責任ですよね」
こんな書き方では、人は動かないでしょう。
「シフォンケーキが膨らまなくて悩んでいる方、100%膨らむコツを教えます。それは、○○です」
と言い切ると、パワーが高まります。
プロなのですから、全責任を負う覚悟で、言い切りましょう。
「100歳まで健康で生きるために」という内容で書いてくださった文章から、お借りしてみます。
「何がその差を作ったのでしょうか? 様々な要因はありますが、ウォーキングでも水泳でも構いませんが、何らかの運動習慣、つまりトレーニングをしていたかどうかが、そのひとつであることは間違いなさそうです」
・様々な要因はありますが
・~でも~でも構いませんが
・何らかの
・そのひとつ
このような表現が、たいへん控えめで謙虚です。学会の発表なら、このような言い回しが正確で、敵を作らなくて、厳しいツッコミを回避できるので多用されますが、「人を動かす」ための文章としては、厳しいツッコミを覚悟の上でスパッと言い切るほうがいい。
「何がその差を作ったのでしょうか? 答えはひとつ、運動です」
このくらいにシンプルに言い切ってしまうほうが、読み手にスパッと入っていきます。
以上、文章の「人を動かす力」を高めるポイントを2つお伝えしました。
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