「大きな声の出し方を教えて」
と発声法のレッスンを求められることがあります。
大きな声は発声の基礎技能ですから、
共鳴発声法を基礎から身につける気があるなら、
いくらでも教えられます。
ところが、問題はそこでは終わりません。
大きな声を出す能力があることは、すぐに本人にもわかります。
だから、「思いっきり出して」と言われれば、
「あ~」「お~」とかなり大きな声が出る。
ところが、そのまま話せないのです。
瞬間風速的に「わっ!」と大きな声を出すことはできても、
そのまま持続的に──たとえ30秒でも──ずっと話すことができない。
なぜか。
理由のひとつに、「大きな声で話している自分」に対する違和感があります。
小声でボソボソ話す自分には馴染んでいて、
無理することなくボソッと言葉を発するのは、心地よい。
しかし、声をしっかり張って、ピーンと共鳴の利いた声で
持続的に話している自分には違和感を覚え、
気恥ずかしかったり照れたりするのです。
発声では、「自分を変える」作業が不可欠です。
自分の内面が変わらなかったら、結局は元に戻ります。
「元」とは、声量も、話し方も、声の質も含みます。
今までの自分を卒業して、新しい自分を育てたいなら、
ある意味「過去の自分」にダメ出しをして、
「古い自分を否定し、新しい自分を歓迎」することになる。
それはそうですよね。大きな声で話せるようになりたいのに、
小声でボソボソ話していた頃の自分を後生大事に守っていたら、
新しい習慣など身につくわけがない。
かつての自分に未練はない。新しい自分を育てるのみ。
それができた時点で、急激に伸びていきます。
今までより大きな声で話したいなら、
「適切な声量」の感覚を変えていくトレーニングをしましょう。
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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
ウェブ:http://wsi-net.org/
メール:tenor.saito@gmail.com
「新しい自分を育てるのみ」をこれから「座右の銘」にします