トレーニングで伸びるコツ(成長の原理原則)

●もう今日からでも「伸びるタイプ」になれる

今日は発声・話し方のトレーニングに励むみなさんに、「トレーニングで伸びるコツ」の話をします。

といっても、「毎日練習しましょう」だとか「水面下では成長しているから大丈夫」といった、すでに一般にも広く知られているような話ではありません。

どちらかというと、「不都合な真実」と呼ばれるタイプの事実について。

「成長」に関する原理原則です。

この話をよく理解して、自分のトレーニングに取り入れれば、今日からでもすぐに「伸びるタイプ」になれます。

あくまでもあなたが「伸びるタイプ」「もっと伸びるタイプ」になるための話として、今日はお伝えします。

声のサロンでもことば学講座でも、「記憶」や「学習」を取り上げていますね。心理学の大事なテーマの一つです。

成長や技術の習得、トレーニング成果などに関わる大事なテーマです。

あなたはレッスンの時間に、記憶もするし学習もしますね。成長もするし、技術の習得もします。

私はそれを促進させる役です。

学び習うあなたは、有益な技能を習得しようとしている。私はその成果を願っている。

役割は違えど、同じ一つの仕事に取り組んでいるといえるでしょう。


●教えるのがうまい指導者、下手な指導者の違い

教師や講師、インストラクター、コーチと呼ばれる人たちは、教えたり育てたりするのが仕事です。

「できない」が「できる」に変わるサポートをするのが、こうした指導者の役割ですね。

昔も今も、「育てるのがうまい指導者」と「下手な指導者」がいます。

指導者自身、わかっているんですよね。自分はわりと育てるのがうまいほうか、下手なほうか。

どうやってわかるのか。

もちろん、結果からです。成果からです。

教えた相手が育てば、うまい。育たなければ、下手。

教授法を学び、指導の経験を積んでも、生徒がちっとも育たなかったら、良い指導者とは評価されないし、自分でも自信が持てない。

逆に、教える技術を学んでいなくても、長年の経験がなくても、受け持った生徒がグングン成長したら、良い指導者として認められる。自分でも自信が持てる。

あくまでも結果が教えてくれます。

だから、教えてきた年月が短く人数が少ないうちは、確率的に見極めが不正確になります。

極端な話、1人しか教えたことがなく、その1人が育てば「100%成功する優秀な指導者」ということになってしまうし、その1人が育たなければダメ指導者ということになる。

あまりに不正確な見極めですね。

しかし、教えた相手が数百人、数千人と増え、教えた年月も何十年と伸びるにつれて、だんだんと正確な見極めができてくる。

そんなレベルのベテラン指導者たちが語った「育てるコツ」があります。

育てるコツというより、「育てることに成功したとされる成果の真実」です。

優秀とされる指導者は、教え方の技術が優れていたのではなく、「育った相手が優れていた」というのです。

シンプルな言い方をするなら、「育つ人だけを育てた」。

育たない人を、努力して、工夫して、がんばって育てたのではない。

育つタイプが勝手に育っただけ。

もちろん、指導者が「この人は育つから教える」「この人は育たないタイプだから教えない」と選り好みしたり贔屓したりするわけではありません。本気でみんなを指導している。

スポーツの世界では素質ある選手だけ選抜して育てるという場面はありますが、多くの場では「相手が希望すれば教える」ものです。

音楽教室の先生が生徒に「あなたは才能があるから教える」「あなたには才能がないから教えない」と選びませんね。

塾の先生が「キミは伸びそうだから入塾を認める」「キミは伸びそうにないからお断り」なんて選り好みしない。

そりゃそうです。「絵が苦手だから習いたい」と教えを乞うたのに、「どうもセンスがなさそうだから教えない」と断られたら困りますよね。

「センスがあれば、とっくに得意になってる。センスがないから習いたいんだ」とツッコミますよね。

職場でも部下から相談された上司が「キミは才能がないから教えない。私は才能がある部下にしか教えない」と答えたら、問題ですよね。

だから、「育つ人だけを育てた」といっても、みんなを本気で教えてはいるわけです。でも、その中で「実際に育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」ということ。

これが育成の、指導の真実だというのです。

よろしいですか? ここはかなり大事なところです。

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

この一文、ぜひ覚えておいてください。

といっても、教える仕事をしている方は、私も含めて、この事実を「責任転嫁の口実」にしてはいけませんね。それではプロ意識に欠けます。

指導者は、困っている相手に手を差し伸べ、サポートをするのが役目です。

「困っている相手」とはすなわち「不足している相手」なのだから、センスや才能を求めて選別するのは違いますよね。

必要とする人に適切に「give」することだけに集中するのがいい。

「部下を親身に指導して、成長を見守るのは嬉しいけれど、何年かすると異動で担当が変わってしまうから虚しい」という話を聞いたことがあります。

「教室に通ってくる生徒も、いつかは卒業していくから、なんか本気になりきれなくて」とこぼしていた人も。「できるようになると、いなくなる」という。

でも、そこは考え方が大事。相手本位のはずの指導も、入れ込み過ぎるとどこかで自分本位が忍び込んできます。

サポート役が変わり、御役御免になったなら、それはそれで嬉しいこと。

子が自立して自分のもとから離れることを心から喜ぶ親のような意識が、指導者には必要ですね。


●なぜ彼らは伸びたのか

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

私の経験からも、確かにその通りと納得できます。

今までいくつかの分野で数千人を指導してきました。直接会わずに指導した通信教育などを入れれば延べ数十万人になります。

自慢のようですが、「教えるのが異常にうまい」と評されたことがあります。

事実はどうか。

「教えるのが異常にうまい」のではありません。「異常に伸びた生徒がいる」だけのこと。

100人のクラスを担当して、100人全員が例外なく伸びるなら、「教えるのが異常にうまい」と自慢していいでしょう。

でも、そうではない。その中で10人か20人か、限られた一部の生徒に「異常に伸びた生徒」がいる。

英語の授業だとしたら、英語が嫌いでたまらなかった生徒が、テストで80点や90点を楽々取るようになり、やがて英語の仕事をするプロになる──そんな極端な変化をする生徒が一部にいる。

全員ではありません。大勢ではありません。ごく限られた一部です。

それでも劇的な変化だから、目立つわけです。それで「教えるのが異常にうまい」と評される。

指導者自身はよくわかっているものです。「優秀な人気講師」「あの先生に教われば必ず合格する」なんて高く評価してもらえるのは嬉しいけれど、それは「優秀な生徒のおかげ」であることを。

オリンピック選手が金メダルを獲ると、その指導者や指導法が脚光を浴びることがありますが、もちろん指導者の力もすばらしいにせよ、選手が活躍したおかげで評価されるんですよね。

あるプロゴルファーがこんな話をしていました。「スイングに唯一の正解があるわけではない。その時期に活躍している選手のスイングが正解とされるだけだ」。

正しいスイングと誤ったスイングがあると信じている人が多いが、そうではなく、その年に優勝したゴルファーのスイングが正解だとしてみんなが真似するだけのこと。

つまり、そのスイングが「正解」の栄冠を勝ち得たのは、そのスイングを採用して活躍してくれたゴルファーのおかげである、ということですね。

スイングの種類など、細かに分類すれば何種類にも分けられるのだそうです。今年のなんとかオープンで優勝したゴルファーが、スイングAではなくスイングBを採用していたら、優勝できなかったか。

メーカーAのゴルフクラブではなくメーカーBの製品を使っていたら、優勝できなかったか。

まあ優勝はごくわずかな差であっちへ転んだりこっちへ転んだりするので断言はできないまでも、優勝争いをするグループにはおそらく残るだろう、ということでした。

なぜなら、「伸びる性質」を持っている選手だから。


●育つ性質を強めるには

思い出しましょう。

「育ったのは、もともと育つ性質を持っていた人だけ」

トレーニングする側から考えてみましょう。

育ちたい、成長したい、何かを身につけたいなら、「育つ性質」を持つ必要がある、と解釈できます。

どんなタイプが「育つ」のでしょうか。逆にどんなタイプは育たないのでしょうか。

数千件ないし数十万件というケースから、ある程度は統計的に「こんなタイプは伸びる」と導き出すことができます。

私が見てきたのは、文章や発声や潜在意識や動作など、人間の深いところに関わる事柄が多いので、たとえばワープロソフトの使い方だとか機械の操作法などの習得とはちょっと違った部分があるかもしれませんが、共通部分も多いはずです。

トップ3といえる要素を挙げますから、今後のトレーニングに取り組む上での参考にしてみてください。

  1. いつもそのことばかり考えている
  2. 「自分」が強すぎない(長続きする秘訣)
  3. アイデンティティが変わる

それぞれ説明を補足します。

1. いつもそのことばかり考えている

習ったことをいつも意識のどこかに置いていて、何かにつけて思い出す状態は、たいへん望ましい。

「意識」や「言葉」なんて、起きている間ずっと付き合っているものですから、気にしていれば24時間絶えず意識の中に置いておけます。

肩甲骨や股関節の使い方を指導したところ、「仕事中にしょっちゅう肩甲骨を動かしている」と話してくれた方もいます。

「起きてから寝るまで、ずっとトレーニング。たぶん寝ている間も」と表現した方もいます。

むしろ、自分が取り組んでいることを考えていない時間のほうが少なくなっていく。それが伸びるタイプです。

2. 「自分」が強すぎない(長続きする秘訣)

「自分が○○」「自分は××」が強すぎると、習ったことを素直に吸収できないばかりか、取り組みが長続きしません。

「継続」は伸びるタイプの必須条件ですからね。

続けるには、教わる内容と自分自身がぶつからないほうがいい。

たまに年配の方から「もう今から始めても遅いでしょうか」と質問をいただくことがあります。

いつ始めても、伸びる人はぐんぐん伸びます。それに、これからの人生の中で今日が一番若いんです。

とはいえ、年配の方の弱点として「今までの自分とぶつかって素直に受け取れない」ところは確かにあります。

発声を習っても、「若い頃にこう習ったんですけど」と自分の中にあるものとぶつかって、素直に入ってこない。

これに関しては、「素直が一番」と表現したことがあります。

大人なんですから、スパッと覚悟を決めたら、あとは素直に受け取っていくのがいい。それができる人は、必ず伸びます。

そういえば、最近は「ネットでこういうのを見たんですけど」と言われて困惑している講師が少なくないそうです。音楽教室の先生も、生徒さんから「YouTubeでこういう弾き方を見たんですけど」と言われて、「だったらここに習いに来ないで、YouTubeで勉強したらどうですか」とお引き取り願ったそうです。

確かにそういうタイプの生徒は、伸びませんね。ネットでいろいろ探して、参考になりそうな答えがないかと気軽に行動しているのかもしれませんが、この行動パターンの持ち主は、今後も何かあるとネット検索に戻りますからね。

ネットでふらふらと答えを探している点で「自分が強い」とは逆のようにも思えそうですが、「何かあればネット」という行動パターンに執着するところから、「自分が強い」と言えます。

自分を中心に据えて固定し、「自分に合うものを探す」人はなかなか伸びない。

「合う自分に育てていく」という、自分側を動かしていく意識があると、伸びていきます。

3. アイデンティティが変わる

アイデンティティとは、「自分は何者か」の認識のこと。

発声のトレーニングを始めて数年経って、自分を「発声に取り組む者」「声を大切にしている人間」と認識するようになる人は、伸びますね。

つまり、伸びるタイプは「そういう人間」「そういう存在」という自己認識が変化してくる。

逆に、伸びないタイプは「ちょっと声に興味があって習っている」という感覚でずっとやっている。

たとえば、声のサロンやことば学講座を受講している方であれば、「自分は声を大切にしている者」「身体や意識の大切さを知っている者」「だから丁寧にトレーニングを積み重ねている存在」といった自己認識になっていますか?

こうしたアイデンティティは大事です。

そういう存在になっている、という「なりきり」をまずは本気でやってみるといいですよ。

今日は、せっかくトレーニングや修業に取り組むなら成果を上げてほしい、取り組んだなりの素敵なものを手に入れてほしいとの思いから、「伸びるタイプ、伸びないタイプの違い」についてお話ししました。

これを機に、「グングン伸びるタイプ」「ガラリと進化するタイプ」になりきってしまいましょう。

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通る声は共鳴発声法でマスターしよう(ウクレレ弾き歌い)

●通る声の秘密は「共鳴」

「声が届かなくて、よく聞き返されるんです」
「通る声の出し方を教えて」

というご相談は、頻繁にいただきます。

確実に届く「通る声」を身につけるには、喉を開けて、お腹の支えを覚えて、そしてやはり「共鳴」のコントロールができるレベルまでに至ってほしい。

通る声の秘密は「共鳴」だからです。

今、声のサロンでは「共鳴」トレーニングの大事なプロセスに入っていますね。

「ん~~~」とハミングを使って、ウクレレ弾き歌いをしながら「響き」を捉えるトレーニングです。

感覚がつかめてきましたか?

響き(すなわち共鳴)のコントロールを会得するのにたいへん効果的なトレーニングなので、じっくり時間を費やしてみてください。それだけの価値があるトレーニングです。


●今はとにかく「振動を味わう」

「ちゃんとできているかどうか確信が持てない」という内容のメールがすでに届いています。

よかったら、試しに録音して送ってみてください。

「響きを強める」という今回の課題ではありますが、ビリビリ振動する感じをひたすら強めようとすると、つい喉で押したり力んだりして、声帯周辺の筋肉を疲労させたり、声帯を傷めたりしかねません。

振動がわかればコントロールもしやすいので、強められるようになるといいのですが、最終的には「振動が強ければ強いほど望ましい」わけではないので(使い分けが大事になっていく)、今は必死に強めようとして力むのではなく、ただ「振動を味わう」くらいでいいですよ。

思い出してみてください。

無造作にハミングしただけでも、鼻はビリビリと振動していましたね。ということは、ナ行やマ行などの鼻音は特に、今までだっていつもビリビリしていたはずです。

でも、マとかナとか言うたびに「うわっ、鼻がビリビリ震えている」と驚いたり喜んだりしていなかったでしょう。

つまり、「振動しているかどうか」より、「振動していることを自覚しているかどうか」が大事。

自覚できると、今までどれだけ不安定に、気まぐれに、無自覚にビリビリやっていたかに気づきます。

その状態では、気分によって声が強まったり、不安になると声も不安定になったり、イライラすると声の出だしばかりウワッと強くなったりと、心理状態に翻弄された発声、話し方になってしまいます。

共鳴コントロールとは、共鳴を意識的にコントロール下に置けるようになることです。

「発声には声帯が生み出す振動を必ず伴う」という当たり前の事実に、まずはしっかり気づきましょう。

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外郎売(話し方トレーニングのための資料)

●「外郎売」の全文です

「声のサロン」今月(2020年7月)のトレーニングで使う『外郎売』の全文をPDFファイルでご用意しました。

話し方、発声のトレーニングでは定番の題材なので、手元に持っておいて損はありませんね。

今回の課題は「只今はこの薬」から「系図正しき薬でござる」までです。

発声に気をつけながら録音して、メール添付で送ってください。

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オンライン声のサロンレッスン(2020年7月1回目)

●なぜ「上達が止まる」ことがあるのか

さあ、今月も肩甲骨をやわらかく使いながら、楽しくレッスンしましょう。

7月2日(木)は夕方5時から、4日(土)は夕方6時から、オンラインでおこないます。

喉に頼らずに声を出して話す感覚、わかってきましたか?

今回も丁寧かつ慎重にトレーニングしましょう。

ところで、この「丁寧かつ慎重に」は、ちゃんと上達できる「練習」のコツです。

今回のレッスンでは、「練習」で最大の成果を上げる方法についてお話しします。

「練習」は技術を身につけ、技量を高めるのに必要な活動です。しかし、がむしゃらに練習すれば成果が上がるわけではありません。

「練習したのに、前より下手になった」という相談メールが届いたことがあります。

本当は上達しているのに自分では下手になったと感じているケースもあれば、実際に練習の仕方がまずくて下手になっている(よくない癖がついてしまった)ケースも中にはあります。

それよりなにより、おそらく誰もが経験したことのある、不思議な事実があります。

それは、「上達し続ける人と、上達が止まる人がいる」。

今回はこの不思議について取り上げつつ、すでに何かで頭打ちを感じている方が現状を打破して次の段階へと進めるように、「正しい練習の仕方」を覚えていただきます。

声のサロンで取り組む発声や話し方やウクレレに限らず、仕事のスキル、職場での技能、スポーツや習い事など、上達し続けるにはポイントがあります。

どんな練習でも時間をかけさえすれば伸びていくかといえば、そうはいきません。

せっかく時間を費やすのだから、成果の上がる効果的な練習をしましょう。


●今月の課題曲(楽譜のPDFファイル)





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人を動かす文章の書き方(オンライン文章の書き方講座)

●人を動かすパワーを高めよう

受講者のみなさんから届いた文章を読んでいて、講師の私が楽しませていただいています。

今回のテーマは「トレーニングを勧める」でしたね。みなさんそれぞれに思い入れのあるトレーニングを取り上げたり、専門性の高い立場からの見解が披露されていたりと、読んでいて実に楽しい。

ぜひこの調子で有益な情報発信をしたり、文章力を仕事に活かしたりしていってください。

今日はあなたの文章の「人を動かす」力を高めるポイントを2つ取り上げます。

現状のご自分の文章を見直して、さらにパワーアップさせてみましょう。

2つのポイントとは、「直接的なメリットが先」と「スパッと言い切る」です。


●直接的なメリットが先

まず、「直接的なメリット」に言及できていますか?

講座の中で「メリットの先」「メリットとベネフィット」「読み手の大切な人にとってのメリット」などをお伝えしたせいか、逆に「直接的なメリット」が弱まってしまったようです。

直接的なメリットは、先に、明確に、言葉にしましょう。

たとえば、

「四股を踏む」→「足腰が強くなって何歳になっても健康で歩ける」→「介護要らずで家族が幸せ」

であれば、「足腰が強くなって何歳になっても健康で歩ける」が直接的なメリットです。

ここが曖昧なまま「四股を習慣にすることで、家族に世話をかけない老後が……」と続け、さらに介護がどんなに大変か、生活に負担をかけるかといった話を展開しても、文章に人を動かす力が出ません。

直接的なメリットを明確に伝えてあると、さらにその先のメリット(いわゆるベネフィット)や、大切な人にとってのメリットを読んだときに、意識の中で「歩けるって大事だな」「だから足腰が大事なんだな」「だから四股なんだな」とつながりが強化され、行動を促します。

……と、実際にはメリットがしっかり書けていた方の文章から題材をお借りしました。

英会話の先生なら、「英会話ができるようになったら、どんな良いことがあるか」をハッキリ伝える。

それをせずに「こういう特別なメソッドだから英会話がマスターできます」の根拠を並べても、読み手はなかなか動いてくれません。

もっとも、直接的なメリットが明白かつ異論がないものであれば、「だから、できる」で足りるので(受験業界で「合格できる!」など)、自分自身のケースをしっかり考える必要があります。

文章は、だから奥が深い。コミュニケーションですからね。この言い方ならいつでもどこでも完璧、なんて型はありません。


●スパッと言い切る

次のコツは、「言い切る」。

スパッと言い切りましょう。

日本人は控えめで、謙虚を美徳と考える人が多いので、はっきりスパッと言い切らない、歯切れの良くない文章が多く見られます。

勇気をもって言い切りましょう。

たとえば、「○○をすれば、シフォンケーキが上手に膨らみます」とコツを教えるとします。

この時、

「○○をすると、私の場合はうまくいくことが多いので、よかったら試してみてください。ほかにも良い方法はあると思いますが、わりと成功率は高いです。水分量と温度設定も関係するので、一言では言い切れないし、ネットで見たら逆に○○は良くないという説もあるそうなので、まあ最後は自己責任ですよね」

こんな書き方では、人は動かないでしょう。

「シフォンケーキが膨らまなくて悩んでいる方、100%膨らむコツを教えます。それは、○○です」

と言い切ると、パワーが高まります。

プロなのですから、全責任を負う覚悟で、言い切りましょう。

「100歳まで健康で生きるために」という内容で書いてくださった文章から、お借りしてみます。

「何がその差を作ったのでしょうか? 様々な要因はありますが、ウォーキングでも水泳でも構いませんが、何らかの運動習慣、つまりトレーニングをしていたかどうかが、そのひとつであることは間違いなさそうです」

・様々な要因はありますが
・~でも~でも構いませんが
・何らかの
・そのひとつ

このような表現が、たいへん控えめで謙虚です。学会の発表なら、このような言い回しが正確で、敵を作らなくて、厳しいツッコミを回避できるので多用されますが、「人を動かす」ための文章としては、厳しいツッコミを覚悟の上でスパッと言い切るほうがいい。

「何がその差を作ったのでしょうか? 答えはひとつ、運動です」

このくらいにシンプルに言い切ってしまうほうが、読み手にスパッと入っていきます。

以上、文章の「人を動かす力」を高めるポイントを2つお伝えしました。

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動作の最適化……股関節

●股関節を使いこなそう

今日の「オンラインことば学講座」では、股関節を取り上げました。

股関節を使いこなすことがどれほど重要か、バッチリ理解できたでしょうか。

こちらの図を見ながら、復習してみてください。

ポイントとなる大事な言葉(名称)は、部位とともに覚えていましたか?

次回のレッスンは、2020年7月11日(土)17:00~です。

それまで股関節を使いこなすトレーニングをたっぷりしていてください。

次回、チェックしましょう。


●動作の最適化すると、どうなるか

これから、あなたの動作を最適化していきます。

朝起きてから寝るまで、あらゆる動作を最適化していくと、毎日の生活が楽になるだけでなく、体が長持ちします。

私たちの身体も、一種の道具であるという見方をすれば、「上手に使えば長持ちす」のは当たり前ですね。

すでに職場での作業が楽になったという体験が寄せられていますよ。

体の使い方の課題で、仕事が楽になりました。

ぞうきんを絞るときに、指先の力を抜き腕全体を使うようにしたら、
軽くしか力を入れていないのに、以前よりもしっかり絞れるようになりました。

感染対策の清拭作業のため頻繁にぞうきん絞りの機会があり、
手首や腕が痛くて苦痛だったのでとても助かりました。

いいですねえ。手の使い方を変えましたね。

雑巾を絞るとき、最後につい指に力を入れてギュッとやりたくなりますね。

でも、それをやっていると、やがて指を傷めたり腱鞘炎になったりして、とてもつらくなります。

手の使い方を変えただけで、負担がぜんぜん違うでしょう?

しかも、ほかの動作にも応用できるのが、うれしいですね。

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O primavera(Pier Adolfo Tirindelli)

楽譜と歌詞、単語リストなどをこちらにご用意しました。

楽譜と歌詞



単語リスト



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自分の文章を客観的に読む方法

●他人のことはまる見え

何かを改善したいなら、「良し悪しがわかる」必要があります。

ところが、「自分のことが一番わからない」。

「わかってないのは本人ばかり」なんて言葉もあります。

逆に他人のことは、良くも悪くも、まる見えなんですよね。

良く見える場合は「隣の芝生」になるし、悪く見える場合は「あら探し」になる。

客観視の特徴ですね、まる見え。

だから、他人の文章を読むと、「いいなあ」と感じたり、「ちょっと読みづらい」と感じたりと、評価できてしまうものです。

ところが、自分の文章となると、途端に「これでいいのか」「ダメだとしたら、どこが?」と、さっぱり判断がつかない。

そこで今日は、自分の文章を客観的に読む方法についてお話しします。


●「時間を置く」という普遍的な処方箋

自分の文章を客観視しにくい原因は、主に2つあります。

まず、自分の「今の気分」と文章がリンクしている、という原因。

カーッと熱くなっている時に熱い文章を書き連ね、熱い気持ちのまま直後に読み直したら、まさに気分をそのまま表現した文章なのだから、「よくわかる」「気持ちが伝わってくる」「引き込まれる」文章に感じます。

しかし、熱い気持ちで書いた文章を、翌日に冷静になってから読むと、「なんだこの、熱くて暴走している文章は」と恥ずかしくなる。

読み手は書き手と同じ気分で読むわけではありません。むしろ冷静に、落ち着いて、客観的に読む「翌日の自分」に近いと思ったほうがいい。

企画書でもラブレターでも、一晩寝かせてから送れという話を聞いたことはありませんか?

本の原稿も同じです。書いた直後は「最高の出来ばえ」なんて舞い上がっていても(その時点では最高のつもりで送るわけです)、ゲラ刷りが出版社から戻ってくると、「な、なんだこの独りよがりの文章は」と呆れながら書き直していくことになる。

1週間もあいていれば、もはや他人の目ですからね。

時間を置いてから読むだけで、文章の粗がよく見えます。


●書き手は多くを知っている

自分の文章を客観視しにくい2つ目の原因は、「書き手は多くを知っている」。

文章を書くということは、そのテーマや事柄に関して読み手よりも多くを知っているはずです。

先生が生徒に、講師が受講者に向けて書く場合はもちろん、部下が上司に報告書を書く場合だって同じです。

自分が知っていることは「当たり前」になってしまうから、書き方や話し方が不親切、不十分になりやすい。

先ほど「ゲラ刷り」と言いましたが、出版社にとっては当たり前の言葉が、一般の人たちにはイマイチ通じないかもしれません。

実際私も昔、「ゲラが上がってきたので」と話す編集者に「ゲラって何ですか?」と尋ねたことがあります。

「ああ、ゲラというのはですね、校正のために原稿を印刷したもので、こちらです」と現物を出して説明してくれましたが、ゲラが「当たり前の語彙」になっている編集者にとっては、予想外の反応だったでしょう。

「いきなり言われても、わからないですよね」とフォローまでしてくれました。

目の前に相手がいるなら、こうして質問しながら調整していけます。しかし文章はそうはいかないので、読み手は「なんだかよくわからない」と感じたら読むのをやめてしまいます。

自分だけがわかっているのかもしれません。

相手の頭の中を想像しながら、「本当にこれで伝わるかな」といつも自問しながら書きましょう。


●視点を手に入れるのが前提

自分の文章を客観視するコツについてお話してきました。

とはいえ、時間を置いたとしても、相手の頭の中を想像したとしても、自分の中に「文章の書き方」の原則が入っていなかったら、判断できません。

文章講座で勉強した型やポイントをしっかり復習して、使いこなせるまで練習もして、文章の原則をマスターしておきましょう。

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