●共鳴発声法の特徴は倍音
今日は「倍音の効果」について取り上げてみましょう。
共鳴発声法の特徴は、なんといっても「周波数成分の厚み」です。発しているつもりの「基音」だけでなく、その上に何層もの「倍音」が乗っています。
多くの日本人は発声が平たく潰れ、ぴちゃぴちゃとした印象の声になっていて、倍音的に豊かな声ではないとされています。
喉の開け方がうまくないのですね。
喉の開け方が下手というだけでなく、中には照れや偽悪の感覚からか、特に親しい人との会話でわざと声を歪ませたり、かすれ声のまま気にせず話し続けたりする人もいて、「良い声で話そう」という意識が国民全体で弱いようです。
まあ、日本語は言語的に、
1. 母音が多いのに、その母音が短い
2. 意味を区別するために音の高低差をつけなければならない
という難しさがあるので、発声技術が高くないと良い声にならず、個人差が大きくなるのは日本語話者の宿命なのかもしれません。
イタリアのローマでタクシーに乗っていたら、道行く女性を見てはドライバーが「Bella! Bella!」(きれいな人だ)と連呼していました。
「きれいな人だ」より、もう少し下卑た感じの言い方でしたが……。
しかし、声は良い。
真似して発音しても、日本人がやると「ベッラ」になって、「ぜんぜん違う!」とドライバーからダメ出しの連続。
「llの発音が良くない」だけでなく、その前の「e」が違う。
長さとか高さとか、そんなのではなく、音が質的に違う。倍音がしっかり含まれている。
片仮名の「ベッラ」では、「声になっていない」とすら言える。
そのドライバーが声楽家や発声指導者だったわけではなく(たぶん)、イタリア語が「言語的に有利」なんですよね。ただ話しているだけで、良い声になりやすい。
うらやましいかぎりですね。
●この世のものとは思えないほど気持ちいい……
日本語を話すあなたも、共鳴発声法なら倍音をしっかり出すことができます。
「歌声の会」で共鳴発声法で歌った体験を、こんなふうに報告してくれた方もいます。
> 先生の誘導で皆さんと一緒に歌えたおかげか、
> 初めてピーンと入った音で、しかも楽に出せました。
>
> みなさんの共鳴が合わさり、溶け合って、
> 自分もその一部になっていて、
> まさに「この世のものとは思えないくらい強烈な快感」でした。
>
> こんな体験初めてです。
> 今思い出しても、震えが走ります。
>
> 歌を、声を、もっと極めたいです。
いいですねえ。声には極める価値があります。というより、楽器の演奏と同じで、極まったゴールなどない、一生の修業でしょうね。
「歌声の会」に参加したら、「出していて、気持ちいい声」に集中して、倍音を鍛えましょう。
●喉を開ける方法
では、どうしたら倍音を豊かにすることができるのでしょうか。
入り口は「喉あけ」です。
喉が開いていないと、良い共鳴になりません。
先ほどの(日本人に多い)「平たく潰れ、ぴちゃぴちゃとした印象の声」とは、喉が詰まった状態の声といえます。
倍音の乗せ方をコントロールして「声の色」を磨いていくには、トレーニングの段階がありますが、まずは「喉あけ」。
喉を開ける方法として、最初に取り上げられるのが「あくび」です。
声楽家でもアナウンサーでも、最初に習う喉の開け方です。
ただし、あくびは完成形ではありません。「喉あけ体験」くらいに思ったほうがいい。
あくびをすると、誰でも喉が開きますが、たいていは声が奥にこもったような、ぼんやりした声になり、発音も不明瞭になってしまいます。
あくびの真似をして、喉が開いた形を体で覚えたら、そこからが本当の喉あけトレーニング開始です。
まずは半ばあくびをしながら、朗読の練習をしてみましょう。歌なら、フレーズの頭で毎回軽くあくびの形を作るのも効果的です。
「あくび喉」とも呼ばれることがあるこの状態は、あくまでも共鳴発声法トレーニングの入り口です。
あくびをすると声が一瞬で変わるので、「おお!」と感動すると同時に、「これが発声法なのか」と早合点してしまう人もいます。
中には「こんなぼんやりした声になるなら嫌だ」などと勘違いして、練習をやめてしまう人もいる。
もったいないですね。
あくびによる喉の開け方は、まずはマスターしておきましょう。
●喉が開くとどうなるか
喉の開け方を覚えると、発声がどう変わるのか。
① 喉(声帯)に負担がかからない
② 倍音が増えて成熟した「大人の声」になる
③ 落ち着きのある穏やかな響きになる
④ 声を出していて気持ちいい
⑤ 説得力、安心感、癒しの力が声に備わる
それぞれざっと説明しますね。
喉が開くことによって喉頭の位置が下がり、そこから上の共鳴の乗り方が変わり、つまり共鳴が乗りやすくなる。
だから声帯の振動のみの喉頭原音でがんばるのではなく、共鳴コントロールで声を強めることも弱めることも自由自在になるので、声帯に負担がかからない。
共鳴(倍音)の乏しい声は、つぶれた生っぽい、幼稚な声になります。豊かな共鳴が乗った声には倍音の厚みがあり、成熟した「大人の声」にふさわしい声になります。
声に落ち着きが出て、穏やかになり、声を聞いた相手も、出している本人も、意識状態が良好になります。
神経質にキンキンした声や、ストレートにぶつかる強い声を聞いていると、気分がよくないですよね。声を出している本人も、「ちょっと気持ちが昂るだけで、声がキンキンしてしまう」としたら、気分がよくないでしょう。
喉を開ける方法を身につけてクセにするだけで、そんな声のデメリットを克服することができます。
なにより共鳴発声法(喉をしっかり開けて、共鳴をコントロールする発声法)は、声を出していて気持ちいい。
私たちの体は、涙にしても汗にしても息にしても、「何かが体から出るのは気持ちいい」のだそうです。
声だって同じですね。せっかく出すなら、良い声を出したい。
また、人間関係へのメリットとして、喉あけができると、声に説得力、安心感、癒しの力が備わります。
人と接することの多い仕事に就いている方には、ぜひ喉の開け方、共鳴発声法を身につけて、豊かな倍音を人間関係に活かしていただきたいと思っています。
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新潟市で共鳴発声法の話し方レッスン
ウェブ:https://wsi-net.org/
メール:tenor.saito@gmail.com