名器を手に入れる言葉のレッスンとは

●言葉と声のトレーニングは「名器の入手」に等しい

ストラディバリウスといえば、言わずと知れたバイオリンの名器。

この名器を世界的なバイオリニストが手にすれば、ウットリさせる音色で私たちを魅了します。

しかし、どんなに優れたバイオリニストでも、バイオリンを手にしていなかったら、ただの人です。

実力があっても、その実力を発揮するための「道具」がなかったら、どうしようもありません。

「言葉」についても、同じことが言えます。

言葉はあなたの内面の表れです。

つまり、あなたの口から出てくる「しゃべり」は、内面そのものではなく、内面の「表現」(表れ出たもの)です。

バイオリンの例でいえば、バイオリニストの持つ演奏技術が「内面」。音楽を奏でるためのベースですね。

言葉と声は「実際に出る音や奏でる音楽」に喩えられます。

つまり、言葉と声の能力が高いということは、「優れた楽器を持っている」とも言えるわけです。

素敵ですね。言葉と声のトレーニングは、「名器の入手」なのですから。

世界的なバイオリニストでも、「弦が数本切れている」ような不完全なバイオリンは演奏できない。

言葉でいえば、「語彙が少ない」状態です。

プロのクラリネット奏者でも、管の詰まったクラリネットでは良い演奏はできません。

発声でいえば、「喉が詰まっている」状態です。

あなたがいくら素敵な「内面」を持っているとしても、その素敵な内面を実際に外に表し相手に伝えるための「表現」は言葉と声が担います。

質の高い言葉と声──まとめて「話し方」──はさしずめ名器です。

これから名器を入手して、磨きをかけていきましょう。

これから「ことば学講座」では、あなたが名器を手に入れるための、あなた自身を名器にするための言葉のトレーニングをパワーアップしていく予定です。

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あなたの言葉を「感じよく」するレッスン

●「感じのよさ」は価値

今月の魅力アップ講座は、「あなたの言葉を感じよくする方法」と題して、言葉のレッスンをします。

それも、会場でただ話を聞くだけでなく、自ら「言葉の作業」をするトレーニングの時間です。

「感じがいい」って、多くの人が思っているより、ずっと大事なんですよね。

「感じのよさ」とは、「価値をカバーするごまかし」「その場しのぎの姑息な手」ではありません。

感じのよさはひとつの価値です。

「感じがよくない」ことが原因でうまくいっていない場面がたくさんある理由は、「感じのよさはひとつの価値」と考えると、よく理解できますね。

あなたの話し方に、価値を加えましょう。

 

●言葉を置き換えていこう

実はすでに昨日、新潟会場のレッスンは終わっているので、受講者から「その後のトレーニングの様子」が届きだしました。

「言葉を感じよくする」には、今まで無造作に、疑うことなく使っていた言葉を、別の言葉に置き換えることになります。

「こんなふうにやっていいのか」「この方向の置き換えでは感じがよくならない」と感覚がつかめると、言葉の置き換えがどんどんできるようになります。

「ちょっと練習するだけで、こんなにうまくなるんだ」と驚くかもしれませんよ。

 

●感じのよさは内面から

「言葉を置き換えるだけでなく、本心からそう思う自分にならないと、本当のトレーニングではありませんよね」と話してくれた方がいます。

まさに、それがトレーニングです。

適切な言い方を思いついたとしても、本気でそう思っているわけではないとしたら、単に「口がうまい」「うわべだけの人」だけになってしまいます。

とはいえ、「聖人君子じゃないから、そんなキレイ事は言えない」と言いながら悪口や毒舌を吐くのは、違います。

断じて違います。

少し無理して、少し背伸びして、「今の自分にはちょっと気恥ずかしい」ような言葉でも使ってみることで、内面も変わっていきます。

言葉と内面は、本来ひとつですから。

さあ、言葉のレッスンを続けますよ。

 

 

いつの間にか成長──話し方はじっくり育つ

●時間をかけて育てた技術は本物

受講者のお一人が、こんな話をしてくれました。

「自分の話す姿を撮影してみたら、以前は震えるほど緊張していたのに、いつの間にか落ち着いて話せていました」

いいですねえ。成長を感じるとうれしいでしょう。私もうれしい。

「いつの間にか」は、話し方や発声のように「育つのに時間がかかる」ものの特徴です。

今日のトレーニングの成果が、明日実感できるわけではない。

それどころか、今週一週間分の成果も、来週に感じられるとは限らない。

それでも、年単位で見ると、明らかに違っている。

鍾乳石や珊瑚礁がゆっくり育っていくのに似ています。

逆に、「即席」は利かない。

即席の鍾乳石や珊瑚礁があったら、それは「偽物」ですよね。

発声や話し方も同じです。

じっくり時間をかけて育てた技は、本物です。

 

●時間さえかければ本物か

では、時間さえかければ必ず本物が育つかというと、そうはいきません。

鍾乳石は自然の摂理が最高の形に育ててくれますが、私たちの「技術」は調整を繰り返しながら慎重に積み重ねていく必要があります。

場合によっては「長い時間をかけて、良くない形を作り上げてしまう」こともあるから、正確なトレーニングが大事です。

テニスの素振り練習と同じですね。

不正確なフォームでラケットを振ったら、振った回数分だけズレを強めてしまいます。

ただがむしゃらに振るだけでは、かけた時間とエネルギーが活きないどころか、「練習をしないほうがマシだった」にもなりうるのです。

トレーニングで伸ばすための3カ条を挙げておきます。

・長い目で見て(成果を急がない)
・正確に(ズレを強化してしまわない)
・時間をかける(使えるスキマ時間を逃さない)

この三拍子が揃えば、着実に成果を積み重ね、成長していきますよ。

事も無げに乗りきろう(良い声を出すコツ)

 

●バタバタと忙しい時期こそ

年末年始や年度末、ほかにも仕事が立て込んでいる時期など、何かと忙しく、気持ちまでバタバタしやすい時期がありますね。

なんとかこの時期を乗りきりたいと、毎日がんばっている方も多いのではないでしょうか。

良い声を出すには、脱力が肝心です。

共鳴発声法のレッスンでいつもお話ししているように、「必死にがんばる」「力む」「気合を入れる」のは、無理がかかって、良い声になりません。

スポーツでもリラックスできているときに最高の成績を修めるように、声も楽にのびのびと出すときに最も良い声が出ます。

そのための意識の持ち方のコツを今日はお話ししましょう。

 

 

●大事なイベントほど「事も無げに乗りきる」

それは、超多忙な時期ほど、大事なイベントほど、「事も無げに乗りきる」。

あまりに気合を入れて、「全力でがんばるぞ」「燃え尽きるぞ」「最後までやり抜くぞ」と力むと、終わったときに本当に燃え尽きて、体調を崩したり、やる気を喪失したりします。

イベントをピーク(山の頂上)に設定すると、登頂時に目的を見失って気が抜けてしまうのです。

死ぬほど勉強して第一志望の進学先に入った学生や、夢にまで見た就職先に決まった新社会人が、翌月にやる気を失っている「五月病」は、まさにそんな燃え尽き症候群ですね。

いわゆる「打ち上げ」(イベント後に慰労の目的でワッと騒ぐ会)につながるような感覚も、燃え尽き無気力につながります。「やった、終わったあ!」とピークに到達した感覚を強めてしまうからです。

「打ち上げ」より、「反省会 & 次回の企画」を淡々と話し合って、いつものように過ごすのが、流れが途切れないコツです。

たとえばガラコンサートが終わったら、本番の興奮冷めやらぬ直後に、もう来年のために何を強化し、どんな練習をしていくかを考えている。

やがて高いレベルに到達する人は、そんな思考パターン、行動パターンを持っています。

「フェルマータ○周年」が実は何の一区切りにもならず、流れの中の一点にすぎないのと同じように、ガラコンサートが何かの区切りになるわけではない。

途絶えない流れの中の一日にすぎない。

「本番でがんばって良い演奏をしなきゃ」ではなく、「いつでも良い演奏ができる力をつけるためにふだんのトレーニングをする」「そうやって出せた力が今の実力」という感覚で、事も無げに当日を乗りきりましょう。

 

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【共鳴発声法】身体を楽器として鳴らす方法

●良い声で話せるかどうかは「習慣化」次第

良い声で話す共鳴発声法をしっかりマスターするには、練習を習慣化することが大切です。

たとえば、朝起きたら声を出す。
車の運転中に、声を出す。
電車の待ち時間に、声を出す。

自分の生活パターンに合わせたタイミングに、いつでもいいので、発声トレーニングを習慣化してしまいましょう。

習慣とは、つまり「考えなくても、がんばらなくても、当たり前のようにする状態」です。

歯磨きをするときに、いちいち理由や目的を考えませんよね。「虫歯にならないように、今日もしっかり歯磨きをするぞ」と考えながら歯ブラシを手にする人は少ないでしょう。

もし歯磨きの最中に誰かから「どうして歯磨きなんてするの?」と聞かれたら、「えっ?」と一瞬詰まるはず。理由など要らない習慣になっているから。

発声も習慣化しましょう。

すると、出る声や出しているときの感覚によって、その日のコンディションが分かるようになってきます。

「声がかすれる。声帯が少し腫れぼったいかな」
「昨日教わった共鳴の感覚が、やっと分かった気がする」
「声に伸びがない。喉が詰まっている感じ」

こんなふうに、体が「良い声、良くない声」をちゃんと教えてくれます。

毎日の習慣だから、分かるのです。週1回の練習では、こうはいきません。

今、朗読の練習を毎日していますか?

忙しかったら一日10分でもいいので、毎日「声と向き合う」時間を確保してみてください。

 

 

●体を鳴らそう

共鳴を集めて発声のポジションを高めて朗読をすると、「体が楽器のように鳴る」感覚がやがて分かります。

最初は高アクセント(高めの声)でピーンという感覚として感じられるはず。

その状態をできるだけキープして歌ったり朗読をしたりする練習を続けると、あなたの体が「鳴りやすい楽器」に育ってきます。

ただし、注意点があります。

「ピーンの感覚を出す」ことだけにこだわると、口の中をゆがめたり力ませたりして、「とりあえずピーン」を無理やり作ろうとしてしまいます。

これは良くないんです。

自分で聞いて分かりますよね。声の色が良くない。無理やりピーンを出そうとすると、やけに硬質な音になったり、母音が歪んで発語が不明瞭になったりする。

あくまでも「発声の基本」を守りながら出したピーンが本物です。

次回のレッスン日まで、たっぷり練習をしましょう。

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良い声の土台を作ろう……四股

●声だって、体が基本

言語戦略研究所の齋藤です。

良い声の基礎を成すのは、発声技術です。

喉を開けたり、横隔膜その他の筋肉を駆使して呼気をコントロールしたりといった技術によって、あなたの声は良くなります。

しかし、技術を支える土台は、体です。

オリンピックの体操選手だって、寝たきりになったら、前転だってできないのですから。

発声にとって特に有用な身体状態は、

・柔軟であること
・下半身が安定していること

この2つです。

今回は「下半身の安定」に役立つトレーニングをご紹介します。

 

●四股を踏んでみよう

四股(しこ)を踏んだことはありますか?

力士が土俵入りのときにする、脚を横に交互に上げる、あの動作です。

こんなに高く上げなくても大丈夫です。

私はずっと四股を踏んできました。相撲の動作としての四股は、中学校の相撲の授業のときだけですが、柔道部でも、学生時代の極真空手部でも、四股はトレーニングメニューの一つでした。

四股で鍛えられるのは、下半身の筋力と、股関節の柔軟性による「安定感」が大きいと実感しています。

下半身の筋トレとして優れているだけでなく、ちょっと気合を入れて繰り返せば有酸素運動としても優秀です。

本当は「声のサロン」のレッスン時に全員でおこなうトレーニングメニューにしたいくらいなのですが、四股を踏むには服装が限られ、なにより和服の私はできないので、各自の自宅トレーニングに任せます。

追求すると奥が深い四股ですが、まあ難しいことは考えず、片脚を横に持ち上げた姿勢を2~3秒キープ、反対側も繰り返す……という感じでやってみてください。

※声のサロンは、良い声で話せるようになる
 ボイストレーニング話し方教室(新潟市)です。
 日本発声協会が認定する話し方発声法の基本、
 共鳴発声法が学べます。
 平日コースと週末コースがあり、フェルマータを会場に
 月2回ずつ開催されています。

 新規に受講をご希望の方は、事務局(メイフェア)まで
 お電話(025-211-7007)ください。

 詳しくはこちらから。
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https://kotoba-strategy.com

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新潟市で共鳴発声法の話し方教室
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通る声、届く声の出し方の本

 

上達のコツは「そのまま体に入れる」

●頭で覚えるには限界がある

良い声の出し方を身につけるには、コツがあります。「体で覚える」ことです。

「そんなの当たり前」と思いましたか? 発声は技術ですから、体で覚えるのは当たり前。確かにそのとおりです。

ところが、ついふだんの癖なのか、「理屈で納得」しようとして、上達が遅れたり止まったりするケースがめずらしくない。

ちょうど今日、「声のサロン」受講者のお一人が、「何も考えずに体で覚えるのが楽しくて」と話していました。

「そのまま体に入れる」という最高のコツがどうやら体感としてつかめているようですね。その証拠に、非常に伸びがスムーズで、驚かされるほど。

頭で覚える「顕在意識型」は、扱える情報量に限界があります。体で覚える「潜在意識型」なら、扱える情報量が膨大です。

発声・話し方レッスンは、そのまま体に入れてください。

 

●今の感じが良い声!

「体で覚える」とは、たとえばどんな感覚なのか。

「喉を開ける」で説明しましょう。

「喉を開ける」という状態については、何度も何度もレッスン時に説明します。しかし、理屈を知ったとしても、喉が開くわけではない。

声を出していて「今の声! 今のが喉の開いた声!」と指摘されたときに、そのときの体の感覚を覚えて、いつでも再現できるようにするのです。

言ってみれば、「喉を開けるって、どんな感じ?」と知ろうとするのではなく、「今の感じが開いている状態!」と言われたときにその感覚で覚えようとする。

「できる」のが先です。できてから、「あ、これか」と分かる。初めて泳げたとき、初めて自転車に乗れたとき、初めて逆上がりができたとき、いつもそうだったでしょう?

理屈で理解できてから、できたのではない。膨大な情報量を体が勝手に処理してくれて、先に「あ、できた!」が起こる。理屈は後から「なるほど、こうしたから、できたのか」とついてくるし、別についてこなくても構わない。

たぶん今でも、自転車に乗れる理由が説明できない人のほうが多いでしょう。

良い状態を体が覚えると、「今のがいい状態」「今のが良い声」と言われる場面が少しずつ増えてきます。

そのときの自分の体の状態を、そのまま体に染み込ませていきましょう。

上達のコツをお話ししました。

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いい声で話すコツ──練習量を増やそう

●練習は裏切らない

以前にここでも「練習は裏切らない」という言葉を引き合いに出して、練習量を増やしましょうとお伝えしました。

練習は、習慣です。
ある日急に思い立って、声が嗄れるまで何時間も練習したって、翌日にへばって声が出ないようでは、練習になりません。

気分の盛り上がりとは無関係に、習慣的におこなうのが練習です。そうであってはじめて練習効果の積み重ねになります。

レッスンを受けて伸びる人は、いわゆる「素直な働き者」で、正確なトレーニングをコツコツと真面目に続けます。

「真面目だけが取り柄ですから」と話していた方がいます。真面目は最高の取り柄です。私も「真面目な人に教えたい」なんて話したこともあります。

真面目なタイプは一点集中で真剣に取り組むので、確実に伸びます。自分の感覚や思い込みに囚われず、新しいことをパッと取り込んで「染まって」いけるのも特徴です。

そして、なんといっても、「ちゃんと練習する」。だから伸びるわけです。

課題が難しいと感じたら、練習量を増やしましょう。朗読課題が「うわ~、なかなか覚えられない」と思う暇があったら、もう一度読みましょう。

「できない」「難しい」と口にする人ほど、練習量が少ないものです。「30回くらいで、なんとなく覚えられるものですよ」と聞いても、10回程度で「いやあ、なかなか覚えられないですね~」と弱気な言葉を口にし始める。

脳の仕組みからして、新しい技能を身に着けるとき、「繰り返し」は必須です。

繰り返しこそ、練習です。
繰り返しこそ、準備です。

練習量を増やしましょう。イヤというほど、イヤにならずに、ひたすら繰り返し練習したら、本番はちっとも怖くない。

そういう体験を積み重ねていきましょう。

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共鳴発声法のトレーニングに朗読は必須

●朗読の技法

こんなご相談がありました。

「朗読なら良い声で読めるのですが、ふだんの会話がダメなんです」

わかります。できあがっている文章を覚えて声に出すのであれば、自信をもって良い声で「演じる」ことができるのでしょう。

なのに、その場その場で考えながら、反応しながら口に出す「会話」はどうしても口元の声、喉声、ナマっぽい幼稚な声になってしまう。

そんな声を「地声」と呼ぶ人もいます。「地声」は正式な発声用語ではないので、どんな発声を指しているかをその都度確かめる必要がありますが、良い声ではないナマっぽい感じ、野太くて低めの声を指している人が多いようです。

しっかり練習した「商品の説明」は、良い声で話せる。なのに、厳しい指摘などが飛んできたときに「すみません」と口走る声が口元の太い声になってしまうとしたら、共鳴発声法の型ができていないから。

共鳴発声法で話せるようになるには、朗読練習によって体に型を教え込む必要があります。

本番で少々慌てても、逆に緊張がゆるんでも、体が型を覚えていれば、崩れません。まるで形状記憶合金のように、気を抜いてもちゃんと良い形に戻る。

そのための「朗読レッスン」に、これから入ります。

 

●「声色」は使わない

朗読では、「声色」は使いません。「声色」(こわいろ)とは、いわば物真似のこと。

登場人物が女の子ならキャッキャッと女の子らしい声を出し、ネズミが出てきたら奇妙に甲高い声をキーキーと出し、ゾウが出てきたら低~い声での~んびり話すことでキャラ設定をするようなのは、声色であって朗読ではありません。

たとえば、夏目漱石の『坊っちゃん』の冒頭に、「いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい」という台詞が出てきます。

ここを読むとき、あまりに気分を出して、挑発的に、バカにした調子で声を歪ませて「よ~わむ~しや~~~い」のように読むと、朗読としては少々不自然になります。

過剰な声色のせいで、聞き手が物語の世界から抜けてしまうのです。

登場人物をイメージしながら読めば、自然に「なんとなくそれっぽい印象を抱かせる」話し方にはなりますが、最小限に抑えて、聞き手の想像の余地を損ねないようにしましょう。

さあ、共鳴発声法で朗読しますよ。共鳴発声法という「声の型」を染み込ませましょう。

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上手な「断り方」が自分の時間を増やしてくれる

●上手に断る方法を教えて

「断り方」に悩んでいる方は少なくありません。

「飲み会への参加を断る上手な断わり方を教えてください」と「会話に関する質問」に書いてくれた方もいますね。

特に自分の大事な取り組みがある人にとって、時間を奪われてしまう「あまりプラスにならない会合」には参加したくないのが本音でしょう。

冬になると、忘年会やら新年会などが増えて、相談を受けるケースが増えてきます。

断り方の原則として、次の3つを守ってみてください。きっとうまくいきますよ。

  • 言葉はやわらかくても、態度は断固として
  • 一貫性を持たせる
  • 否定しようのない理由を添える

たとえば、「忘年会への参加を断る」とします。

「出たくないんです」のようにストレートな言い方では、角が立ちます。

「え、なんで?」と聞かれますよね。それが面倒くさくて、しょうがなく参加してきたのでしょう?

言葉はやわらかく、が原則。ただし態度まで「えぇ~っ、でもぉ……どうしようかなあ……」なんてやっていると、「迷える程度の理由で断ろうとしているのか」と不審に感じさせてしまいます。

また、「一貫性」はきわめて重要です。「一貫性を持たせるための説明」を考えましょう。

「お酒を飲みたくないので、上司にそう言ったら、乾杯だけは付き合いなさいと言われて、それ以来ドタキャン」

ドタキャンなんかして大丈夫ですか? 繰り返したら余計に叱られるでしょう。

「飲みたくない」なんて理由がよくないんです。一貫性を持たせるためには、「体質的に飲めない」のような永久に使い続けられる理由を伝えないと、次回以降ずっと新しい口実を考えなければなりませんよ。

うっかり乾杯に付き合った回があったなら、今さら「体質的に」は使えないので、「ドクターストップで」あたりが使えます。

理由を聞かれても「はい、ちょっと……」で濁せます。

こういった理由に対して「そんなの大丈夫でしょ」と無理強いする人はいないでしょう。

まあ実際にはいますが、そういうケースはまた次の手を考えればいい。

まずは原則を押さえておきましょう。

最後に「否定しようのない理由」として、たった今すごく良い例が届いたので、ご紹介しますね。

> 所属している部署の忘年会に参加する予定にしていました。
> 退職される方がいるので送別会も兼ねるのかな、
> と思ったためです。
>
> ところが送別会はあらためて行うと知ってから、
> 不参加に変更しようか迷っていました。
> 仕事も忙しいし、お酒の席は好きではないし、
> 気持ちいい会話が飛び交う場になりそうにもない。
> でも、今さら断りにくい上に、20名弱の組織で女性が5人だから、
> 私が行かないとなんとなく会が寂しくなるかな、
> などといろいろ考えていました。
>
> ところが、誰に聞かれても堂々と言える偽の急用を思いついたのです。
> 「妹に頼まれて赤ちゃんの世話にいく」です。
> とたんに心に余裕ができ、あっさりと断ることができました。

なるほど、うまいですね。
「妹に頼まれて赤ちゃんの世話にいく」という口実に対して、「べつに行かなくてもいいでしょ」とは誰も言えません。

ほかに似た──汎用性の高い──口実に「親の介護」があります。

個人の都合や好き嫌いにとどまらない、他者が関わる理由で、しかも古典的な「不幸があって」と違って何回でも何年にもわたって使える点で秀逸です。

「親なんかいいじゃない。一晩ぐらいほうっておけば」とは誰もいえませんよね。

 

●「来られないんでしょ?」と言われたら大成功

おもしろいもので、こういった会合(忘年会やら新年会やら)が積極的に好きな人は意外に少ないようです。

大人になればなるほど、「時間がもったいない」と億劫に感じるようになるらしい。

なのに、「毎回いちいち断る口実を考えるのが大変だし、断ると迷惑をかけているかも、どう思われているのかな、と考えてしまうのがストレスだから、仕事のうちと割りきって参加している」人が多いようです。

一部の人たちがわ~っと盛り上がると「みんながそう」に見えるんですよね。「みんなが年末の忘年会を楽しみにしている」と。

でも、実際は違う。

マスメディアが取材したりニュースになったりする物事を考えれば、「目立って見えるのはむしろ一部の特殊な人たち」とわかる。

ハロウィンの夜には若者がみんな渋谷に集まるように錯覚するし、年末年始には日本人みんなが大きなスーツケースを転がして成田空港にいるように見えるし、ゴールデンウィークの終わり頃には日本人がみんな高速道路の上でイライラしているかのように思える。

しかし、若者の大多数は渋谷に集まらないし、日本人の大多数は年末年始に日本にいるし、日本人のほぼ全員が高速道路以外の場所にいる。

「風潮」に飲まれることなく、素敵な時間を確保したいですね。

こうして話し方や発声、コミュニケーションを学び、トレーニングをしているあなたにこそ、「波風を立てずに、風潮に合わせる」のではなく、あえて多少の波風を立てたとしても、素敵な時間を確保できるように「断わり方」の技術を高め、しかも実践していただきたい。

毎回「断わる口実を考えるのが面倒」なのは、なんとなく風潮に飲まれて参加したりしなかったりと揺れるから。

最初から「来られないんでしょ?」と聞かれるようになったら、うまい「断わり方」が功を奏している、ということです。

毎回律儀に参加している人ほど、よんどころない事情での欠席なのに「義理を欠く」「こういう場には出なさい」などと責められ、出ないのが当たり前になっている人は、「お世話になった方の送別会だから挨拶だけ」と顔を出したら「律儀ですね。ご丁寧にありがとうございます」なんて喜ばれる。

なにより、大切なトレーニングに充てる自分の時間を毎日確保できるようになるのがプラスです。

みんなが酔っぱらって騒いでいるような場に身を置くより、素敵なお茶会で素敵な会話のトレーニングをするほうが話し方の指導者としてもオススメです。

「断わり方」──気にしてみてください。

「えっ、今回も来られないの? なんで?」はまだ断わり下手。最初から「来られないんでしょ?」と聞かれるようになったら、真の断わり上手といえるでしょう。

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