●子供の嗄声を治したい
ボイスアカデミー(キッズボイス)には、お子さんの嗄声(ハスキーボイス、ガラガラ声)についてのご相談がたまに寄せられます。
今日も、キッズボイスではありませんが、「娘の嗄声を治してあげたい」とのご相談がありました。
小中学生くらいの活発なお子さんがハスキーボイスぎみの場合、いわゆる学童嗄声と呼ばれるケースが多い。
声の出し過ぎで声帯結節ができ、声が常にかすれている状態で元気な男の子によく見られます。
たいていの子供は発声を習わないので、元気に大きな声でしゃべったり叫んだりしていれば、声帯にトラブルを負うのは仕方ないのですが、ひどいガラガラ声なら本人も快適ではないはずなので、早めに対処してあげましょう。
音楽の時間に歌うとしても、みんなが楽に出せている高音が、全身で振り絞るようにしないと出ないので、歌うことが嫌いになってしまうかもしれません。
ハスキーボイスを個性と捉える向きもありますが、声帯にとっては不適切な使われ方ですから、まずは「声帯の使い方」を身につけさせてあげたほうがいいでしょう。
発声の専門家からすると、ハスキーボイスは決して良い声ではありません。喩えるなら、ケガをして足を引きずって歩いているようなもの。
ケガやトラブルで一時的に足を引きずるのは仕方ないとしても、治っても引きずっていたら、「それも個性」とは呼ばないでしょう。
また、人気アイドルやアニメの登場人物がハスキーボイスだとしても、真似をしてハスキーボイスを出そうとするのは、「足をケガしたアイドルの真似をして足を引きずってみる」ようなもの。
しかも、ハスキーボイスは声帯に負担がかかります。やるのは自由とはいえ、オススメはできません。
やはり、澄んだ共鳴発声法が「良い声」ですから、できる範囲で働きかけをしてあげられるといいですね。
1. 大声で話したり叫んだりすることが多いケース
小児や児童に多く見られる典型的な嗄声で、思春期を過ぎる頃には自然に治ってしまうことが多いので、さほど心配はいりません。
ただ、話している内容が聞き取れないほどの嗄声でコミュニケーションに支障をきたしたり、本人が苦しそうだったりするなら、「できるだけ声を出さない」「せめて大声は出さない」などをアドバイスして様子を見てください。
大人でも黙ったまま過ごすのは大変ですから、小学生がアドバイスを厳格に守ってくれはしないでしょうが、多少でも声帯への負担が減れば治りやすくなります。
ほかにも、
・力んでしゃべらない
・奇声を上げない
・叫ばない、怒鳴らない
・長い時間ずっとしゃべり続けない
・賑やかな場所でしゃべらない
・動きながら声を出さない(部活動でありがち)
といったアドバイスも適宜してあげるといいでしょう。
2. 大声は出さないほうなのにハスキーボイス
大声を出すタイプではないのにハスキーぎみになっているなら、発声の仕方が原因と考えられます。
声帯にトラブルがなくても、声帯の使い方によっては、ハスキーボイスになってしまいます。
健康な声帯の持ち主でも、森進一さんの真似や力士の真似をして、「ごっつぁんです」などとやれますね。
その声が、「発声の仕方が原因の、健康な声帯による嗄声」です。
治し方を子供に説明するのは難しいので、良い声とハスキーボイスが入れ替わるように混在しているなら、良い声が出たときに「今の声、いいよ」と教えてあげるのが一番です。
常時ハスキーボイスの場合はなかなか難しいのですが、本人が「なんとかしたい」と思っているなら、焦らず急かさず気長に取り組むといいでしょう。
●ジラーレの感覚がわかれば早い
まず、森進一さんか力士の真似をして、わざと嗄声を出してみてください。
声を喉で出すと(喉声といいます)、ハスキーボイスになりやすいですね。
感覚としては、呼気を声帯に強引にぶつける感じの発声です。
そのまま息を多く漏らしながら話せば、嗄声でのしゃべりになります。
喉あるいは声帯を剥き出しにして声を出す感覚ともいえる。
もちろん本当に声帯が剥き出しになるわけではないので、
発声の説明は難しいですね。
この発声が癖になっている状態が、このケースの嗄声です。
健康な声帯の持ち主であるあなたが、
ずっと森進一さんになりきっているようなものです。
では次に、良い声を出してみましょう。
一瞬「あれっ?」と、普段の発声がわからなくなったかもしれません。
そのくらい、発声は習慣的な身体操作なので、癖になってしまうと直すのが厄介なのです。
まあでも、一時的に物真似をした程度なら、すぐに戻せますね。
澄んだ声を出してみて。
また森進一さんになって。
また澄んだ声。
今度は力士。
また澄んだ声。
交互にやってみると、良い発声と嗄声の違いがわかるでしょう。
良い声のときに、発声のポジションを少し持ち上げて感じがしたら、感覚をうまく捉えられています。
「ジラーレの動き!」と感じたなら、とっても上手に捉えられています。
その感覚をお子さんに伝えて(そこが難しいところですが)、嗄声の状態を変化させられるかどうかを、ゲーム感覚でやってみてください。
とっかかりとしては、「いつも嗄声になりやすい状況」(言葉、声量、フレーズの位置など)を利用してトレーニングしてみると、変化がつかまえやすいでしょう。
「自分の声をよく聞いて」と伝えて、声を聞く習慣をつけさせるのも、良い発声を身につける手助けになりますよ。
声の能力は、一生ものです。その価値に本人が気づくのはずっと先のことになるでしょうが、生涯にわたってすばらしいメリットをもたらし続けるはずです。
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言語戦略研究所でプレゼンテーション講座 齋藤匡章
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