●会話をマスターしよう
「会話が苦手」という悩みは中身がさまざまで、
語彙や話題に乏しいといったテクニカルに対処しやすいケースもあれば、
「異性との会話で緊張してダメ」
「うっかり変なことを口走ってしまうのではと不安でしゃべれない」
といった心因性の強いケースもあります。
今日は「沈黙が苦手」「間が怖い」という、相談件数がたいへん多い悩みを取り上げましょう。
●会話はトレーニング
会話には、トレーニングが必要です。
練習しなければ上手にはならないし、練習すれば必ず上手になります。
また、「どんな会話が良い会話か」といった知識面のチェックも大事で、
「気まずい間が起こらないように、間をおかずに喋り続けて盛り上げたら、
それが最高の会話」なんて思い込んでいたら、
よかれと思ってやった努力が裏目に出てしまいます。
会話トレーニングによって会話スキルを高め、
真の会話上手になりましょう。
トレーニングによって能力アップしないかぎり、
対症療法的に乗りきっても苦手意識は抜けず、
いずれまた気まずい場面に困惑すること請け合いです。
対症療法的に乗りきるとは、どんな方法か。
たとえば、「沈黙が気まずいから、話すことがなくなったら
スマホに逃げればいい」みたいなやり方です。
余談ですが、最近の日本人のスマホ事情は、
異様な光景を生み出していますね。
電車で一列に並んで座った乗客が、
全員スマホをいじっているシーンもめずらしくない。
自転車に跨がった人が道路の妙なところで停まっていて、
「おかしいな。あんなところで停まって。まあでも、どうせスマホだろ」
と推測しながら追い越しざまに見ると、やっぱりスマホをいじっている。
喫茶店やカフェに入れば、
一人でいるお客さんのほとんどがスマホを見ている。
まあ、スマホはツールに過ぎないので、
「スマホで何をしているか」は一人一人違うわけですが、
ここまで一様に同じツールを手にして、しかも凝視している姿には、
人類が何者かに操られているのでは、とも思える異様さがあります。
そんな中で、たまに紙の本をめくっている人がいると、
それだけで魅力的に見えるから不思議です。
●つい喋らされたのはどんな時?
「沈黙が気まずい」「間が怖い」あなたが、
なぜかどんどん喋らされてしまったのは、どんな状況ですか?
普段は饒舌なほうではないのに、
気づけば相手より自分のほうが喋りまくっていて、
むしろちょっぴり後悔したような場面はありませんでしたか?
おそらく、「相手が寡黙で、あまり喋ってくれない」ときでしょう。
「相手がテンポよく喋るから、つい乗せられて喋った」というより、
「相手の台詞が短めに終わるから、自分が次を続けないとと思って喋った」
ときのほうが、バンバン喋ったことでしょう。
つまり、沈黙は「二人とも黙っている」状態だからお互いのものなのに、
あなたが積極的に埋めたわけです。
なにか使命感のようなものに駆られて。
ここに「間を利用する」ヒントがあります。
二人で会話をしているのに、自分が黙っていて、
相手も黙っている状態になったとき、
「何かしないと」と思うのは、あるいは「何かできる」のは、
あなただけではありません。
黙ったまま心地よく一緒にいられるのは、
関係のごく近い相手だけですから。
だったら、相手にも「使命感のようなものに駆られて」
「間を埋めて」もらえばいいのです。
自分ばかり「なんとかしないと」「話題に詰まったら──」
「何に興味があるのかな」と必死に考えて、
間を埋めようとするから大変なのです。
その努力を半分程度にして、相手にも任せてみましょう。
あなたは黙って待つのです。
おもしろいように、今度は相手が間を埋めてくれますから。
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言語戦略研究所「声のサロン」 齋藤匡章
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