●徹底的にやると伸びる
発声や話し方のトレーニングをしていて、急激にぐんと力が伸びることがあります。
伸び方は人によって異なり、当然違っていいわけですが、一人を見ていても、なかなか思うように伸びずに苦労していた人が、急にぐんと伸びたりする。
指導する立場としては、「この変化はなにゆえ?」と気になります。
どういうタイプが伸びやすいのか、どうなれば伸びるのか、とあらためて意識してみると、顕著な傾向が分かります。
月並みではありますが、「素直な人ほど伸びる」といえるし、「徹底的にやる人は伸びる」といえます。
つまり、「声のサロン」に通う会員のみなさんは、伸びるタイプの典型であるわけです。
発声トレーニングのメニューを素直にこなし、徹底的に練習していますね。
それが伸びるコツです。
では、逆に「伸びないタイプの典型」は何か。
怖いことに、そういうのもあるのです。
●先入観が邪魔をする
伸びないタイプの典型は、「先入観が強いタイプ」です。
声や話し方についての先入観を何かしら強く持っている人は、新しいレッスンがなかなか入っていきません。
自分の中にある先入観が邪魔をして、追い返してしまうのです。
・こういう声が良い声
・こういう声が好き
・こういう話し方が上手な話し方
・こういう話し方は下手
といった思い込みや偏見、好き嫌いをもともと持っていると、後から良い技術が入るスペースがなくて、入りにくい。
たとえば「イは口を横に引かない」と言われても、「イ~だ」と唇を横に引くという思い込みが完全に払拭できないうちは、どうしても唇が横に行きたがる。
本人はそんなつもりはないのに、体が勝手に唇を横に引こうとするのです。
レッスン日に良い形に直されても、次回のレッスン日までにじわじわと戻って、延々と同じ繰り返しになってしまいます。
ビーンとした強い声を「良い声」と感じていた人は、声帯の正しい使い方を習っても、「さあ、しっかり発声練習しましょう」なんて促されると、声帯にぶつけるような強引な発声をしようとする。
良い声や好きな声の感覚は、発声トレーニングをして技術が高まってくると、必ず変わります。
「違いが分かる」ようになるからです。
先入観に足を引っ張られないように、まっさらな気持ちになって声のトレーニングに取り組むのが一番です。
●忙しいときほど徹底して
発声や話し方は特に生活に密着した行為なので習慣になっていて、ホメオスタシス(元の状態に戻そうとする力)が特に強く働きます。
「元のやり方」に戻ってしまいやすいのです。
「結局元のまま」に戻らないように、丁寧にトレーニングを積み重ねていくことが大事です。
「日々の継続」ですね。
いつも熱心にトレーニングを続けている方でも、仕事がすごく忙しい時期が続いたり、体調を崩して寝込んだりすると、なんとなくそのままズルズルとトレーニングをしない日々が長引いてしまうことがあります。
忙しいときほど、隙間の時間を見つけてトレーニングしましょう。
3分でもいい。
3分を拾ってトレーニングに使うか使わないかで、大違いです。
「30分ぐらいはトレーニングしたい」と思っている人は、3分あっても「時間がない」と判断してしまうかもしれません。
翌日の仕事のために夜11時には寝たいとして、時計を見て10時50分になっていたら、「あ~ぁ、今日も忙しくて発声トレーニングができなかった」とあきらめてしまうかもしれない。
でも、「走れメロス」の冒頭を1回だけ朗読するくらいなら、できるでしょう。「都の大路をぶらぶら歩いた」まで読んでも1分か1分半です。
どんなに多忙でも、1分半も確保できない、ということはありませんよね。
2~3回読んでも、まだ11時になりません。
このようにして、時間が十分に確保できないときに、1回だけ朗読する、1曲だけ歌う、という行動をするかしないかで、非常に大きな差がつきます。
「たかが1回ぐらいで」と思うかもしれません。
しかし、0回と1回の差は、無限に大きい。
わずか1分を、3分を拾って、1回でいいから声を出すのが、「徹底」です。
徹底的にやりましょう。必ず伸びますよ。
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