●「良いものを良いと感じる」とは
歌声の会でしっかり共鳴発声法で歌っているみなさんの声を聞いていると、声の違いをわかっている様子が伝わってきます。
「良い声が出ている」「今の声はイマイチ」という具合に、自分自身の声にちゃんと反応している。
発声トレーニングを真剣にやっているからこそ、違いがわかるようになったんですよね。
本物の「聴く力」が育ってきた証拠です。
誰でも声を聞いて「いい声ですよね」とか「この歌手の声が好き~」なんて言いますね。
それはそれで、まあいいわけです。好きずきで。
ところが、訓練を受けて耳が育ってくると、反応に規則性が出て、安定します。
規則性とは、つまり「声帯の使い方」「喉の開き具合」「声の支え」「共鳴の集め方」などポイントを外さずに反応する、ということです。
声帯の使い方を例に挙げるなら、空気漏れをしてしまうのは声帯に負担がかかって無駄が多い、よくない使い方です。
いわばガソリンタンクからガソリンを漏らしながら走っているようなもので、「でもこの車が好きだから、これでいい」というわけにはいきませんよね。「好きずきだから」と悠長なことを言っていないで、修理したほうがいい。
声を聞く力がまだ育っていないうちは、「声以外の要素」に惑わされます。
「好きな人の声は好き」「嫌なヤツの声は嫌い」のように。
しかし、耳が育つと、純粋に声を聞くことができるので、「嫌なヤツだが、発声の基本はできている」のように客観的にフェアな反応ができるようになる。
「良いものを良いと感じる」状態といえるでしょう。
●耳が開いたから、感動した
この状態を「耳が開いた」と呼ぶことがあります。「聞く能力が開花した」状態です。
語学でも使いますね。英語を勉強していて、ある日突然「聞こえる」ようになる。次に続く言葉が先取りして分かるようになる。
「次に続く言葉が分かる」なんて、耳が開いていない人からは「超能力者でもあるまいし、それはありえない」と否定されますが、でも不思議でもなんでもありません。
ネイティブスピーカーなら誰でもやっている当たり前の聞き方です。日本人なら「いえいえ、そういうわけには」まで聞き取ったら、続く言葉が予測できますよね。
「いきません」「まいりません」「いかないでしょう」
このくらいの候補に収まりますよね。
しかも、どれにしても意味はそんなに違わない。
すべての言葉、すべての音を正確に聞き取らなくても、コミュニケーションはできるし、次に来る言葉がだいたい分かっていれば、すべての音を正確に聞き取ることだって簡単でしょう。
こういう「言葉の予測」は私たちは頻繁におこなっています。
予測できるということは、意識の節約ができるし、音の聞き逃しに強くなる(意味の取り違えが少なくなる)ということです。
「あ、その映画だったら、私、観たこと」と来れば、まず間違いなく「あります」と続きますね。
「ありません」が続く確率はきわめて低い。
「あ、その映画は、私、観たこと」と、「だったら」が「は」になると、「ありません」が続く確率が五分五分くらいに跳ね上がります。
しかし、「だったら」ならほぼ確実に「あります」と肯定になる。
だから、「だったら」なら「あります」までしっかり聞き取る必要がなく、聞き流して意識を節約できる(別のところに集中できる)し、「は」だったら最後まで意識を向けて正確な聞き取りを心がける。
こういうことを、ネイティブスピーカーは無意識のうちにやっている。
外国語でも同じレベルの判断が利くようになると、耳が開いて、余裕をもって聞き取りができるようになるわけです。
語学まで話が広がってしまいましたが、声に関して「耳が開く」と、その声の状態を──言葉や発話者に惑わされずに──聞き分けられるようになります。
多くの人が聞き取れないものが、手に取るように聞き取れるようになります。「なんとなく」ではなく「明らかな違いとして」聞き取れる。
今回の「歌声の会」では、そんな力を自分が身につけつつあるという自信がついたのではないでしょうか。
本物の「聴く力」が育っていますね。
【歌声の会】
日時:不定期(こちらのカレンダーでご確認ください)
https://mf07.com/
場所:フェルマータ2階(新潟市中央区上近江)
料金:3,000円+税(中学生以下は半額)
内容:日本の古い歌でハモる
※「歌声の会」は、日本の古い唱歌でハモる会です。
詳しくはこちらのページをどうぞ。
↓
https://mf07.com/song.html
※歌声の会は共に歌うメンバーを随時募集しています。ご参加くださる方は、事務局のメイフェアまでお電話(025-211-7007)ください。