声のQ&A

声の疑問あれこれ

このコーナーでは、声に関して日々寄せられるさまざまな質問や相談に、講師の齋藤がお答えしていきます。
※ご質問はお問合せページからお送りください。


Q1. 声は変えられますか?
A. 変えられます。

声は生れつき決まっていて変えられないと思っている人も多いようですが、出る声はボイストレーニングによっていくらでも変わります。

同じ楽器でも演奏技術によってまったく異なる音色を聴かせてくれるように、同じ発声器官を使っても発声技術によって出る声が違います。むしろ「どんなやり方で弾いても同じ音が出る」と考えるほうが不自然でしょう。

まして発声器官は生きた身体ですから、楽器よりも状態が変わります。良い声を出していれば、発声器官という楽器が育つのです。
Q2. 声を変えるのにどのくらいの期間を要しますか?
A. 楽器のレッスンと同じです。

適切な訓練を受ければ、声はすぐに変わります。私が指導を担当している「声のサロン」では、支えを教えただけで3分で声の力が変わります。

ただし誤解しないでほしいのは、3分で声は「変化」しますが「完成」するわけではない、ということ。

バイオリンを習ったことのない人が見よう見真似で出した音と、30分のレッスンを受けて基本的な構えを教わった後の音は、ぜんぜん違う。とはいえ、30分で出せる音などたかが知れている。

声もまったく同じです。3分は極端だとしても、数回の発声レッスンを受けた程度の人と、4年間みっちり発声法を学んだ音大声楽科の卒業生では、声の素養と基礎体力がまるで違う。10年以上も熱心にボイストレーニングを続けている人なら、さらに声に磨きがかかる。

つまり、1ヶ月やれば1ヶ月分の、10年やれば10年分の、費やした時間とエネルギーに応じた成長を重ねてくれるのが声なのです。

あなたの声を磨き込んで、極上の財産にしてください。
Q3. 歌声と話し声は出し方が違いますか?
A. 基本は同じです。

ただし、話し声は一音一音が短く、無造作にもなりやすいので、歌を使って丁寧にトレーニングをするのが効果的です。

時々、「歌は苦手なので、歌わないで話し方のトレーニングをしたい」というお問合せをいただきます。

これは喩えるなら「ボールを打たないでテニスが上手になる方法」「水に入らずに泳げるようになる方法」と同じようなもので、発声の基本はすべてに共通ですから、ほんの初心者レベルであっても難しい。

話し声しか出さないトレーニングでは、「ボイストレーニングを試してみたが、結局何も変わらなかった」で終わってしまいます。

「以前に発声トレーニングを習ったけれど、歌はやらなかった」という方は、たいてい効果を実感できずに終わっているようです。

ある程度しっかりした負荷をかけてトレーニングをすると効果的なだけでなく、実はすごく気持ちいいんです。

本当の声を出す気持ちよさを、ぜひ味わってみてください。
Q4. 「モテ声」ってどんな声ですか?
A. 聞き手の無意識領域に好印象を与える声です。

声楽や発声学に「モテ声」という術語はありませんから、雑誌の取材時に編集部の方から伺った「こんな声がモテ声と呼ばれている」という話に基づいて、専門家の視点からお答えします。

異性に好印象を持たれやすい声や話し方を「モテ声」と呼ぶのであれば、モテ声の出し方はあります。

発声のみならず話し方まで含むので、一言で簡単に「こうすればモテ声が出る」とは言えませんが、生れつきの声質で決まるわけではないので、期待してください。

一つだけ入り口となる条件を挙げるなら、「喉が開いている」こと。喉が詰まっていると、トゲのある鋭い声や苦しそうな声になり、モテ声にはなりません。発声法を学んでいないと喉を開けるだけでも至難の業でしょうから、まずは共鳴発声法を覚えるといいでしょう。

ちなみに、「こんなしゃべり方がモテそう」と、聞こえる感じだけを真似すると、多くの場合、逆効果です。

聞こえ方と発声法にはたいていズレがあるため、真似は違和感を生みます。たとえば、広がりがあるように聞こえる声は、喉を開けっ広げにして出しているのではなく、むしろ逆に共鳴を「集める」ようにして発します。

違和感は心の無意識領域に好印象を与えないので、「異性にはウケても同性を敵に回す」「最終的には異性も離れていく」ようなネガティブな現象を引き起こすでしょう。専門家としてお勧めできません。

正しい発声法に支えられた「良い声」は、異性にも同性にも好印象を与え、認められる力を持つ声です。

発声法の基本を押さえた上で、自分の楽器(発声器官)で出せる最高の音を出せば、それが真のモテ声といえるでしょう。
Q5. 共鳴発声法って何ですか?
A. 話し声の基本的な発声法です。

歌声の基本がベルカント唱法であるなら、話し声の基本は共鳴発声法です。

当研究所でももちろん共鳴発声法の研究と指導をおこなっているし、日本発声協会が唯一「話し声の発声法」として正式に認定しています。

全国の発声指導者がこの発声法に基づいて指導をおこなっているため、言葉くらいはどこかで聞いたことがあるかもしれません。

共鳴発声法の体系はかなり膨大で、言語学や心理学、解剖生理学、声楽など、複数の分野にわたります。今も発声の専門家たちが研究を続け、進化させ続けている体系です。

手軽に習いたい方には、Webレッスンの「音色塾」をお勧めします。音声レッスンもあるので、自宅にいながら共鳴発声法の基本を学ぶことができます。

Q6. 話し声のボイストレーニングは誰にでも効果がありますか?
A. 誰にでも効果があります。

誰でも毎日話し声を使いますが、話し声の出し方を習ったことのある人は少数派でしょう。

「話す」「声を出す」という行為は、歩いたり息をしたりするのと同じように、特に習わなくても自動的に習得できる技能です。

そのためか、子どもの頃に見よう見真似でなんとなく身につけた方法を疑うことなく続けている人が多い。

しかし、歩き方を習った人は美しい姿で歩くし、ヨガの行者や僧侶など特殊な呼吸法を実践している人は長生きです。

知人のドイツ人を「歩き方が格好いい」と褒めたら、逆に「日本人はなぜみんな歩き方が格好悪いんだ?」と質問されました。

聞けば、ドイツでは子どもの頃に学校で歩き方を教えるのだとか。日本の小学校は一糸乱れぬ行進の練習をするくらいが関の山で、歩き方を習う機会はないでしょう。

まして、呼吸法など存在すら知らされない。だからみんな呼吸が浅く、口呼吸の割合も多い。

習わずに自動的に習得する技能ほど、個人差が大きく、魅力や健康を左右しやすいのです。

声や話し方も同じ。訓練を受ければ声が武器になります。話し方が切り札になります。

たとえば、

大事なことを伝えたいときの理想的な声量は?
人前で話すときの視線の動かし方は?
声が相手に与える印象は全体の何パーセント?
聞き手に好印象を与える声の高さは?
好きな人と電話で話すときのポイントは?
こういった話し方や声の原則を知り、技術を身につければ、コミュニケーション能力が格段にアップすることでしょう。

まだ習っていない人が習うのですから、技術は必ず高まります。しかも、コミュニケーションの向上がメリットにならない人はいない。

声のトレーニングは誰にでも効果がある、というのは、そういう理由です。

Q7. 「通る声」「大きな声」が出せるようになりたい
A. 通る声は必ずマスターできます。

言語戦略研究所の調査によると、「声の悩み」の中で最も多いのは、「声が通らない」「大きな声が出ない」という悩みです。

通る声が出ないと、仕事での評価も下がりがちでしょう。

職場で「もっと大きい声を出して」と指示された場合、問題は声が通るか通らないか、です。

通る声と大声は違うので、がんばって大声を張り上げても、ダメ出しが続くばかりか、喉を痛めてしまいます。

通る声は発声技術によって育つものなので、根性で張り上げても逆効果です。

痛々しい、苦しい感じの声になるでしょう?

共鳴を集め、腹圧を一定に保って声を飛ばすテクニックを身につけましょう。

Q8. ハスキーボイスを治したい
A. 嗄声は声帯のトラブルです。

ハスキーボイスを専門用語で嗄声(させい)といいます。

嗄声の原因は、声帯がぴったり閉じないこと。声帯の特定部位に摩擦が集中し、結節やポリープができやすい状態です。

タバコやアルコールなどの薬物が原因となっているケースもあります。昔から「酒焼けした声」という表現がありますね。

心当たりがあるなら、まず摂取をやめ、声が改善するかどうかを確かめましょう。いずれにしても薬物は声にとって「百害あって一利なし」です。

発声法に原因がある場合、健康な声帯に戻ってからボイストレーニングを始めます。

ボイストレーニングは当研究所でも指導できますが、声帯が傷んだ状態で来られてもどうにもならないので、できるだけ声を出さない時間を確保してください。

声帯は、軽く声を出すだけでも1秒間に何百回も擦られるのですから(ラの高さで毎秒440回)、甘く見ないでひたすら黙っていましょう。

また、囁き声は通常の発声よりも声帯に負担がかかるので、気をつけてください。囁くほうが負担が軽いと勘違いして「今は声帯を治すために囁き声で」なんてやると、とんでもない逆効果です。30分も囁き声を続けたら、その後しばらくまともな声は出ません。

「声帯をぴったり閉じる」ボイストレーニングについては、長くなるので機会を改めますが、「ハスキーボイスが出てしまったときは、そのままの調子でしゃべり続けない」ように気をつけると予防になります。

Q9. セールスが成功する声ってありますか?
A. 相手に「届く」声です。

セールスは「交渉」ですから、コミュニケーション能力の基本である「観察力」を駆使して相手を知り、求められている情報を的確に提供します。

その際、声はきわめて有力な武器となります。

たんに好印象を与えるだけでは、セールスはうまくいきません。

横隔膜をしっかり下げ、力のある充実した声を出すと、提供している商品やサービスへの自信が伝わります。

交渉の最大のポイントは「相手を知ること」です。相手がどんな人物で、何を求めているのか、相手本位になって聞きましょう。

セールスの仕事を嫌がる人はかなり多いといいます。「営業だけはやりたくない」という台詞も、頻繁に耳にします。

セールスをしたくない理由は何かご存知ですか?「断られるとストレスが溜まる」「いきなり露骨に嫌な顔をされるんです」ということらしい。

つまり、最初から「何かを売りつけられる」「押し売りされる」と警戒されているわけです。

一般のセールスが、いかに「自分本位」かを物語っていますね。

弊社の製品はこれこれで、業界でもどれほどの評判で、これを導入すれば御社はこうこうなって……と自分を語るばかり。

「自分語り」は警戒され、嫌がられます。

相手が何に困っていて、何を必要としていて、何を好むのか……と相手を知ることがコミュニケーションの基本であり、発声技術向上による優れたコミュニケーションの基本方針でもあります。

セールスを成功させるには、巧みなコミュニケーションで相手を知り、相手の芯に響く言葉をしっかり届けましょう。

Q10. クレーム対応時に適した声は?
A. 「ぶつからない声」です。

クレーム対応は、商売においてきわめて大事な場面です。

謝罪がほしいのか、返金してほしいのか、それ以上の損害賠償を求めているのか、今後の対策を聞かせてほしいのか、とにかく何か言いたいのか……一口にクレームといっても場合によって相手の状態が異なります。

単純に「とりあえず謝る」で収まるケースばかりではありません。

よかれと思って口にした一言が、火に油を注ぐこともある。

しかし、「ぶつからない声」だけは、どんなケースにも当てはまるオールマイティの方策ですから、ぜひ身につけておいてください。

小声とは違います。弱々しい声でもありません。

当たりのやわらかい、ソフトな声です。