通る声より「届く声」

●「それは通る声ではありません」

 

先日、「声のサロン」会員がこんな話をしていました。

「もっと声を細く出せるようになりたいんです。今はちょっと野太い気がして……」

さすがは声のサロン会員だけあって、声の捉え方が的確ですね。

人が大勢いる賑やかな場所で、場全体に向かって話す場合(司会者、幹事、発言者)、声が通るか通らないかが問題となります。

そんなとき、「楽に大きな声が出せたらなあ」と願いがちです。

実際、声の相談に来る方の半数以上が「大きな声が出せない」と悩んでいます。

おそらく、「周囲を圧倒するような、雷のようにとどろく大きな声が、無理せず楽に出せたら、声の悩みは解消するのに」と思っているのでしょう。

気持ちは分かります。「えっ?」と頻繁に聞き返されたり、「聞こえない。もっと大きい声で言って」と叱られたりすると、どうしたらいいか途方に暮れて、つらいですよね。

しかし、よく考えてみてください。

本当に「大声で話す」ことが望みですか?

静かな喫茶店で大声で盛り上がるグループや、至近距離なのにやたらと声を張り上げて話しかけてくる酔っぱらいに辟易したことがあるなら、その仲間入りをしたいわけではないでしょう。

大声を張り上げなくても、きれいな声が楽に通るなら、そのほうが良いのではありませんか?

周囲を圧倒するような大声? それは通る声ではありません。「やかましい声」です。

 

 

●「届く声」は薄く細い

 

確かに「通る声」というと、「聞こえればそれでいい」という印象があるかもしれません。

だから、「まわりの騒音に負けない大声を出せばいい」と思ってしまう。

でも、3m先にいる相手に向かって、10m先まで届く声を出したら、やかましくてしょうがない。

キャッチボールをイメージすると分かりやすいでしょう。目の前の相手に向かって、上手投げで全力でボールを投げつけておいて「届いたからいいだろう」では、ちっとも楽しくない。

そんなキャッチボール、怖すぎる。

「賑やかなら騒音に負けない大声を出せばいい」とは、そういう方針です。

あなたに必要なのは、「届く声」です。がんばらなくても、無理なく相手に届く声です。

そういう声は、一般に想像されるのとは逆に、「薄く細い」。

薄く細い声を共鳴発声法で出せたときは、最高です。得も言われぬ、イイ気持ちでしょう?

私など、「ずーっとこうしていたい」と思って、つい声を出し過ぎてしまうくらい。「歌声の会」で発声の気持ちよさを体験した方もいるかもしれませんね。

薄く細い声が遠くまで届くメカニズムは、ホースの先をつぶして水を遠くまで飛ばすのを思い出せば、分かりやすいでしょう。

つぶさずそのままのホースでは、近くにドボドボ落ちてしまう。

もっと遠くへ飛ばしたくて、水道を全開にしても、そんなに遠くまで飛ばないばかりか、大量の水を浪費してしまう。

水道を全開にしてドボドボやっている状態が、大声を張り上げる発声です。

エネルギーの無駄遣いでくたくたに疲れてしまいます。おしゃべりで盛り上がったり酔っぱらってくだをまいているときは、テンションが上がっているので自覚はありませんけれどね。

 

 

●スーッと届くから、きもちいい

 

共鳴発声法とは、つまりはそういうこと。

いかにホースの先を細くするか、です。

といっても、喉を詰めるのとは違う。喉が詰まったら、管楽器にゴミが詰まっているようなもので、いい声は出ません。

喉を開けながら声を細くするのだから、難しいんですよね。

そう複雑な操作をするわけではないのですが、やり方がつかめるまでは、とらえどころがなくて「どうしたらいいか分からない」。

それが発声法というものです。

「水道全開」のようにパワーで押す発声では、いい声は出ません。

がんばっているつもりでも届かない「そば鳴り」になり、もっとがんばれば「やかましい」と顔をしかめられる。

あなたに必要なのは、大声ではなく、通る声ですらなく、届く声です。

しかも、スーッと楽に届くから、話していて気持ちいい。

これからのレッスンで特に意識してほしいのは、「集めて、細く、薄く」。

「うまくできているか自信がない」とこぼす人がいますが、私がちゃんと発声診断をするから大丈夫ですよ。

レッスン時に「今の、いい声!」と言われたら、ちゃんと共鳴発声法になっている、ということです。

細く、薄く、集めましょう。

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